欧州委員会は5日、ソーシャルメディアなどを通じて故意に拡散されるフェイクニュース(虚偽情報)に対処するための行動計画を発表した。EUでは2019年5月下旬に欧州議会選挙が実施されるほか、20年にかけて多くの国で国政選挙や地方選挙が予定されている。選挙に影響を与える可能性のある虚偽情報がネット上で拡散するのを防ぐため、EU機関に設置された担当部署の予算や人員を拡充するなどして対策を強化する。
虚偽情報は国家や企業、メディアに対する信頼を損なうだけでなく、情報をもとに意思決定を行う人々の判断を誤らせ、民主主義に悪影響をもたらす恐れがある。米大統領選挙や英国のEU離脱を決めた国民投票では、ソーシャルメディアを通じた外国の干渉が指摘されている。欧州委のアンシプ副委員長(デジタル単一市場担当)は「欧州で流される虚偽情報の出所は主としてロシアであることを示す強固な証拠がある」と述べ、ロシアを名指しで批判。「すでに多くの加盟国が対策を講じているが、来春の選挙シーズンに向けEU全体で取り組みを強化しなければならない」と強調した。
行動計画の柱は◇東方の近隣諸国で拡散されているロシア発の虚偽情報に対処するため、欧州対外行動庁(EEAS)内に設置された「東方パートナー諸国向け戦略的コミュニケーション対策室」など、担当部署の予算と人員の拡充◇EU機関と加盟国の間で情報共有を円滑にするための「早期警告システム」の構築◇欧州委の求めに応じてプラットフォーム事業者が自主的に策定したフェイクニュース対策に関する行動規範の実行◇メディア・情報リテラシーの推進――の4項目。
この中で、9月に米グーグルやフェイスブックをはじめとするプラットフォーム事業者や業界団体が署名した行動規範には◇虚偽情報を拡散するウェブサイトやアカウントの広告収入の遮断◇広告主体者の明示◇政治広告の透明性向上◇フェイクニュースを拡散するボット(自動プログラム)の監視強化◇ネット上の虚偽情報をモニターするファクトチェック組織のネットワーク構築――などが盛り込まれている。
欧州委は行動規範に署名した企業や団体に対し、年末までに進捗状況を報告すると共に、来年1月~5月にかけて毎月報告書を更新するよう求めている。