欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/7/28

総合 – 欧州経済ニュース

EUが対ロ追加制裁を発動、経済制裁や武器禁輸も検討

この記事の要約

EUは25日、ウクライナ情勢を受けて対ロシア追加制裁を発動した。ロシアの情報・安全保障担当の高官など新たに15人の個人と18の団体・企業が制裁対象に含まれており、これでEUが発動した資産凍結やEU域内への渡航禁止は87人 […]

EUは25日、ウクライナ情勢を受けて対ロシア追加制裁を発動した。ロシアの情報・安全保障担当の高官など新たに15人の個人と18の団体・企業が制裁対象に含まれており、これでEUが発動した資産凍結やEU域内への渡航禁止は87人の個人、20の団体・企業に拡大した。今月16日の非公式首脳会議で対露制裁を強化する方針で一致していたが、200人以上の犠牲者が出たマレーシア航空機撃墜を受けて対象リストの作成作業を急いだ。EUはさらにロシアに対する経済制裁や武器禁輸などを検討しており、29日に大使級会合を開いて具体的な内容を協議する。

追加制裁のリストには対外情報局(SVR)のフラトコフ長官、連邦保安局(FSB)のボルトニコフ長官、安全保障会議のパトルシェフ書記などが含まれている。企業・団体ではウクライナ東部の親ロ派組織「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」などが対象となった。さらにクリミアの政府系企業などもリストに加わったが、ロシア企業は含まれなかった。

ウクライナ情勢を受けた対ロ制裁をめぐっては、米国が金融機関やエネルギー大手などを制裁対象に加えたのに対し、EUはこれまで加盟国の立場の違いから経済制裁には慎重だった。しかし、マレーシア航空機撃墜をきっかけに、追加制裁に向けた動きが加速。欧州復興開発銀行(EBRD)は23日、制裁強化で一致した首脳会議の決定を受け、ロシアでの新規プロジェクトに対する融資を一時凍結すると発表した。さらに欧州委員会は25日の大使級会合で、ロシアへの武器輸出の禁止、ロシアの国有銀行に対するEU市場での資金調達の制限、エネルギー分野での技術供与の制限などを提案した。

ロシア向け武器輸出では、フランスが計画しているミストラル級強襲揚陸艦2隻の売却が最大の焦点。フランスは2011年にロシアとの間で総額12億ユーロの契約を結んでおり、既存契約を制裁の対象に含むかどうかが問題となる。仏側はすでに締結された契約を制裁対象から除外するよう求めているのに対し、英国などは即刻契約を解除すべきだと主張している。一方、世界最大級の国際金融センターを擁する英国は金融分野の制裁に難色を示しており、調整は難航が予想される。