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2019/1/14

EU情報

マケドニアの国名変更を議会が承認、EU・NATO加盟へ前進

この記事の要約

マケドニアの議会は11日、EUと大西洋条約機構(NATO)への加盟に向けて国名を「北マケドニア共和国」に改名する憲法改正を賛成多数で可決した。これによって悲願のEU、NATO加盟へ大きく前進。国名をめぐって27年間にわた […]

マケドニアの議会は11日、EUと大西洋条約機構(NATO)への加盟に向けて国名を「北マケドニア共和国」に改名する憲法改正を賛成多数で可決した。これによって悲願のEU、NATO加盟へ大きく前進。国名をめぐって27年間にわたり対立してきた隣国ギリシャの議会の承認を経て、国名変更が正式に決まる。ただ、ギリシャではチプラス首相率いる与党・急進左派連合(SYRIZA)と連立政権を組んできた右派政党「独立ギリシャ人」が、マケドニアとの合意に反発し、13日に連立離脱を表明。議会の承認を得られるか微妙な情勢だ。

マケドニア議会の採決では、国名変更をギリシャに譲歩したとして反発する最大野党の右派「内部マケドニア革命組織・マケドニア国家統一民主党(VMRO-DPMNE)」の議員がボイコットして棄権した。しかし、野党議員の一部の支持を取り付け、承認に必要な議会定数120議席の3分の2をわずかに上回る81人が賛成に回り、憲法改正が可決した。

マケドニアは1991年に旧ユーゴ連邦から独立した際、憲法で正式名称を「マケドニア共和国」とした。しかし、ギリシャが古代ギリシャの英雄アレキサンダー大王の出身地である同地の名前を全面に出した国名に反発。マケドニアは2005年にEUから加盟候補国として認定されたものの、EU入りに向けた次のステップとなる加盟交渉開始は、国名をめぐって対立するギリシャの拒否権発動によって先送りされている。

両国政府は昨年6月、国名を北マケドニア共和国とすることで合意。両国議会の批准によって新国名が正式に採用されることになった。マケドニアでは憲法改正が伴うため、国民投票実施が必要だった。

9月に実施されたマケドニアの国民投票は、投票率が50%を大きく割り込んだため不成立となったが、ザエフ政権は圧倒的多数が「北マケドニア」への変更を支持したことを踏まえ、議会が改憲を可決するのは当然して、議会での承認手続きを進めていた。

マケドニア政府は声明で、「国家の歴史に新たな一章が刻まれた」として、EUとNATO加盟に向けた国名変更が議会で承認された意義を強調。ギリシャのチプラス首相もマケドニアのザエフ首相に祝意を伝えた。

国名変更問題はマケドニア側で解決し、今後はギリシャ議会の動きに焦点が移る。議会(定数300)では与党であるSYRIZAの議席が145議席と過半数を割り込んでおり、国名変更の承認に必要な151議席を確保するには7議席を持つ独立ギリシャ人の支持が不可欠だった。

しかし、独立ギリシャ人の党首であるカメノス国防相はマケドニアとの合意を不満として、13日に辞意を表明。同党の連立離脱が決まった。これを受けてチプラス首相は同日、事態の打開に向けて自身の信任投票を今週中に実施する方針を打ち出した。

独立ギリシャ人では数人の議員が信任投票でチプラス首相支持に回るとされるが、信任が過半数を超えるかどうかは不透明。仮に信任が否決されると、前倒し総選挙が実施される見込みだ。