EU税制政策の全会一致原則見直しへ、欧州委が特定多数決移行を提案

欧州委員会は15日、税制政策の意思決定について、加盟国による全会一致の原則を見直し、段階的に特定多数決制に移行することを提案した。グローバル化の進展やデジタル経済の成長などを背景に税制分野でさまざまな課題が顕在化する中、EUとして速やかに適切な措置を講じることができるよう、迅速な意思決定を実現するのが狙い。特に税逃れ対策など早急な対応が求められる領域に関しては、速やかに特定多数決制を導入する必要があると指摘し、加盟国と欧州議会に建設的な議論を促した。

EUでは外交や安全保障と同様、税制政策も通常の立法手続きにおいて全会一致の原則が採用されているため、加盟国の意見調整に時間がかかり、域内の税制調和を図るうえで大きな障害となっている。例えば欧州委は2011年、「共通連結法人税課税標準(CCCTB)」の導入を柱とする法人税制の改革案を打ち出したが、税制の統合に批判的な英国などの反発で協議が紛糾。多国籍企業による税逃れ対策の一環として、16年に改めてCCCTB導入を提案したものの、いまだに合意に至っていない。欧州委は法人税改革の遅れが17年時点で年間1,800億ユーロの損失を招いたと試算している。

モスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は「税制政策における全会一致の原則は時代錯誤であり、非生産的な意思決定方式だ。税制が厳格な立法手続きを必要とする政策分野であることは十分に理解しているが、全会一致の是非について議論することが禁止されているわけではない」と強調。特定多数決制への移行に向けて本格的な協議を開始するよう各方面に訴えた。

欧州委は税制政策を1)課税逃れや税金詐欺などへの対策、2)気候変動対策など他の政策分野を支援するための課税措置、3)付加価値税(VAT)や消費税など、すでに一定の税制調和が行われている分野、4)CCCTBや大手IT企業を対象とするデジタル税の導入など、公正で競争力のある税制に不可欠な重要課題――に分類。1)と2)についてはできるだけ速やかに、3)と4)については25年末までに不特定多数制への移行を決定するよう勧告している。

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