欧州委員会は18日、米国との通商協議の方針をまとめた交渉指令案を公表した。工業製品の関税や非関税障壁の撤廃を目指す一方、農産品は交渉対象から除外した。月内にも閣僚理事会の承認を得て米国との交渉に入る方針だが、米側は農産品も含めた包括的な協議を求めており、双方の対立が再び先鋭化する可能性がある。
欧州委のユンケル委員長とトランプ米大統領は昨年7月の首脳会議で、自動車を除く工業製品の関税撤廃に向けて交渉を開始し、その間は米国がEUからの輸入自動車に対する最大25%の関税発動を見合わせることで合意した。農産品についてはEU内で反対意見が根強いため、当面は交渉の対象から除外する代わりに、EU側が米国産大豆の輸入拡大に応じることで合意。双方は高官級の作業部会を立ち上げて交渉入りの準備を進めてきた。
欧州委は今回、首脳会議の合意に基づいて農産品を交渉対象から除外する方針を改めて表明したが、米国内では農業分野も含めた包括的な協議を求める声が高まっている。米通商代表部(USTR)は今月11日に米議会に通知したEUとの通商協議に関する交渉目的で、米国産の農産品について「EU市場への包括的なアクセス」を求める方針を打ち出している。
欧州委は首脳会議でEU側が約束した米国産大豆の輸入拡大について、昨年7月~12月の輸入量が前年同期比112%増となったと説明。欧州委はバイオ燃料としての活用も認める方針で、今後さらに米国産大豆の輸入が増えるとの見通しを示した。さらに昨年10月から11月にかけて米国からの液化天然ガス(LNG)の輸入も急増したことに触れ、EU側は首脳会議での合意を確実に実行していると強調した。
一方、欧州委は首脳会議で除外された自動車の関税を交渉対象に盛り込んだ。マルムストローム委員(通商担当)は「米国が全ての工業製品の関税撤廃に向けた協議に同意すれば、自動車関税も交渉のテーブルに乗せる用意がある」と述べた。