独仏首脳が新条約に署名、連携強化で欧州統合深化を牽引

ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は22日、ドイツ西部のアーヘンで会談し、両国が連携を強化して欧州統合の推進を目指す新条約に署名した。英国のEU離脱やポピュリズムの台頭などを背景に欧州の結束が揺らぐ懸念が強まる中、独仏が主導して統合強化を実現する。

新条約は独仏が1963年、第2次大戦後の和解を確認する外交文書として締結した「独仏協力条約(エリゼ条約)」を補完するもので、28の条項から成る。条約は独仏の緊密な関係がEUにとって不可欠と強調し、欧州政策で両国が連携を強化することや、共通の外交・安全保障政策を推進すること、ドイツの国連安全保障理事会常任国入りを両国外交の優先課題とすることなどを掲げた。

また、経済分野でも連携を深め、共通の規制を導入して経済統合を進めることや、両国が協力して人工知能(AI)など成長が見込める分野の研究を推進することなどを盛り込んだ。トランプ米政権に代表される自国優先主義が広がる中、多国間交渉に基づく世界秩序を重視する姿勢を改めて示した。

メルケル氏はEUを取り巻く環境が大きく変化している現状に触れ、「我々は特別な時代を生きている」と指摘。新条約はEU内における独仏の「新たな責任と協力の指針」になると述べた。マクロン氏も「独仏は欧州が真に自立し、前に進むための道筋を示す責任がある」と強調した。

ただ、メルケル氏は州議会選での敗北を受けて与党党首を辞任。マクロン氏も国内で激しい抗議デモが続いており、両首脳の求心力は急速に低下している。EUではイタリアや東欧諸国などでEUに懐疑的な政権が独自路線を強めており、新条約が掲げる独仏主導による欧州の統合深化が進むかは不透明だ。

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