欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2019/2/4

EU情報

英が離脱案めぐりEUと再交渉、英議会が首相の代替案支持

この記事の要約

英国の下院は1月29日、政府がEUと合意した離脱案について、承認の障害となっているアイルランドの国境管理問題に関してEUに修正を求める案を可決した。国境問題に絞ってEUから譲歩を引き出すというメイ首相の方針が支持された格 […]

英国の下院は1月29日、政府がEUと合意した離脱案について、承認の障害となっているアイルランドの国境管理問題に関してEUに修正を求める案を可決した。国境問題に絞ってEUから譲歩を引き出すというメイ首相の方針が支持された格好となる。しかし、EU側は再交渉に応じない構えを堅持しており、なお事態打開の見通しは立っていない。

可決した修正案は、英国領の北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境管理問題について、EUを離脱した直後に双方の関係が激変し、貿易などに大きな影響が及ぶのを避けるため2020年12月末まで設けられる「移行期間」中に最終的な解決策で合意できない場合に、期限付きで英国が関税同盟にとどまり、関税ゼロなど現在と同様の通商関係を維持するという「バックストップ(安全策)」に関するもの。与党・保守党のブレイディ議員らが提出した。

同案はバックストップを他の代替策に差し替えるという内容。これが実現すれば、議会が離脱案を承認するとしている。採決の結果、先の離脱案をめぐる採決で反対に回った保守党の強硬離脱派が支持し、賛成317、反対301で可決された。

EUと英国は昨年11月に離脱案で合意した。しかし、英議会では離脱強硬派、離脱反対派の双方が同案に強く反発。下院で1月15日に実施された採決では、保守党で大量の造反者が出て、歴史的な大差で否決された。

国境問題をめぐっては、EUと英国は北アイルランドとアイルランドの間に物理的な国境を設けるのを避けることで合意しているものの、それをどのような仕組みで実現するかは決まっておらず、最終的な解決策を見出すのは困難な状況にある。英国内の離脱強硬派は、バックストップ措置が恒久化され、英国が事実上、関税同盟に残留し、EUのルールに縛られることになるとして反発している。

メイ首相は議会がバックストップを含む離脱案を否決したことを受けて、代替案を21日に発表。国境管理問題をめぐる対応に絞ってEUから譲歩を引き出した上で、議会の承認を求める方針を打ち出していた。

可決された修正案は、首相の方針を承認した形だ。ただ、バックストップの代替策に関しては明記していない。EUとの再交渉で、バックストップの適用期間に具体的な期限を設けるか、英国が一方的に打ち切ることを認めさせるといったことが想定される。

しかし、EU側は合意済みの離脱案が「唯一の可能な合意」として、再交渉に応じない構えを崩していない。メイ首相はEUと再交渉し、成果を得た上で、新たな離脱案をめぐる下院の採決を2月13日までに実施する方針を打ち出しているが、実現は困難な情勢だ。英国がEUを離脱する3月29日まで2カ月しかなく、「合意なき離脱」が一層、現実味を帯びてきた。

可決した修正案は、与野党議員が提出した7本の案のひとつ。このほか、「合意なき離脱を拒否する」という案が賛成318、反対310の僅差で可決した。一方、離脱案が2月26日までに議会で承認されなければ、離脱延期を提案するよう首相に求めるという野党議員の案は否決された。