欧州委員会は1月29日、米グーグルやフェイスブックをはじめとするプラットフォーム事業者や広告業界による虚偽情報対策の進捗状況に関する報告書を公表した。虚偽アカウントの削除などにより一定の成果がみられるものの、5月の欧州議会選挙が近づく中、選挙に影響を及ぼす可能性のある虚偽情報がインターネット上で拡散するのを防ぐため、さらに取り組みを強化する必要があると指摘。対応が不十分な場合は新たに規制を導入する可能性があると警告している。
虚偽情報は国家や企業、メディアに対する信頼を損なうだけでなく、情報をもとに意思決定を行う人々の判断を誤らせ、民主主義に悪影響をもたらす恐れがある。米大統領選挙や英国のEU離脱を決めた国民投票では、ソーシャルメディアを通じた外国の干渉が指摘されている。
主要なプラットフォーム事業者や広告会社の業界団体は昨年9月、業界側の自主的な取り組みを促す欧州委の求めに応じ、虚偽情報対策に関する行動規範を策定した。行動規範には◇虚偽情報を拡散するウェブサイトやアカウントの広告収入の遮断◇広告主体者の明示◇政治広告の透明性向上◇フェイクニュースを拡散するボット(自動プログラム)の監視強化◇ネット上の虚偽情報をモニターするファクトチェック組織のネットワーク構築――などが盛り込まれている。欧州委は行動規範に署名した企業や団体に対し、年末までに進捗状況を報告するよう求めていた。
欧州委は行動規範に署名したグーグル、フェイスブック、ツイッター、モジラの対応について、偽アカウントの削除や虚偽情報をあおるサイトの視認性を制限するなどの措置により、ある程度の進展が認められると評価。そのうえで、政治広告の出稿や広告枠の販売プロセにおける透明性確保、ファクトチェック組織や調査会社との連携強化、EU加盟国の関連機関との協力推進などの課題を挙げ、今年末まで進捗状況を監視して対応が不十分な場合は規制の導入を含む追加措置を検討すると説明している。