欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2019/2/18

EU情報

EU離脱案めぐる政府方針、英議会が否決

この記事の要約

英政府は14日、EUと合意した離脱案について、修正に向けた交渉を進めるというメイ首相の方針への支持を求める動議を下院に提出したが、反対多数で否決された。この採決に法的拘束力はないものの、メイ首相の求心力低下が改めて浮き彫 […]

英政府は14日、EUと合意した離脱案について、修正に向けた交渉を進めるというメイ首相の方針への支持を求める動議を下院に提出したが、反対多数で否決された。この採決に法的拘束力はないものの、メイ首相の求心力低下が改めて浮き彫りとなり、EUで「合意なき離脱」の回避に向けた首相の手腕への不信が強まりそうだ。

採決では与党・保守党の強硬離脱派のうち67人が棄権に回った結果、可決に必要な過半数の支持を集めることができず、成賛成258、反対303で否決となった。

メイ首相は1月21日、下院が離脱案を否決したことを受けて、代替案に関する基本方針を発表した。議会の承認の障害となっているアイルランドと北アイルランドの国境管理問題に関してEUから譲歩を引き出した上で、議会の承認に導くというものだ。下院は同29日に同方針を承認した。

政府はEU側が離脱案の修正を拒否し、交渉が難航していることから、同方針に対する議会の支持を改めて取り付けることで交渉力を高め、EUに譲歩を迫るという思惑で今回の動議を出した。

しかし、与党の強硬離脱派は、メイ首相が「合意なき離脱」を選択肢から外す方針を堅持していることに反発。これによってEUとの交渉力が弱まるとして多くが棄権に回った。首相の戦略が完全に裏目に出た格好だ。

採決に法的拘束力はないため、政府はEUとの協議を続ける方針だ。しかし、メイ首相と議会の溝の深さが一層鮮明になったことで、EUでは仮に譲歩したとしても、首相が議会をまとめ、離脱案の承認を取り付けることができるかどうかについて不信が高まるのは必至で、今後の交渉がさらに厳しくなる見込みだ。

3月29日のEU離脱が迫る中、離脱案をめぐる混迷がさらに深まるのは避けられない情勢で、「合意なき離脱」回避に向けた離脱延期の可能性も強まってきた。