欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2019/2/25

西欧

ホンダが英での生産を21年に中止、EU離脱問題も影響か

この記事の要約

ホンダは19日、英南西部スウィンドンの自動車工場での生産を2021年中に終了すると発表した。世界的な生産再編の一環と説明しているが、現地では英国のEU離脱をめぐる混迷も要因との見方が出ており、大きな衝撃が広がっている。ス […]

ホンダは19日、英南西部スウィンドンの自動車工場での生産を2021年中に終了すると発表した。世界的な生産再編の一環と説明しているが、現地では英国のEU離脱をめぐる混迷も要因との見方が出ており、大きな衝撃が広がっている。

スウィンドン工場はホンダの欧州唯一の自動車生産拠点。2018年には「シビック」など約16万台を生産し、米国を中心に輸出した。

ホンダは声明で、欧州では環境規制が厳しくなり、電動車の需要増大が見込まれるが、欧州内での電動車生産は「競争力などの観点で難しいと判断した」と説明。スウィンドン工場については、シビックの現行モデルの生産終了をもって、閉鎖する方針を示した。次期モデルは米国など他の地域で生産する方向で検討を進める。

今回の決定には欧州新車販売が低迷していることや、日本とEUの経済連携協定(EPA)が2月に発効し、日本の自動車メーカーがEU域内に生産拠点を置く利点が小さくなったことも影響しているもようだ。

英国は3月29日にEUを離脱することになっているが、EUと合意した離脱案の承認を議会が拒否しているため、経済などに大きな混乱をもたらす「合意なき離脱」に至る恐れがある。八郷隆弘社長は記者会見で、今回の決定はEU離脱問題とは関係ないと言明。トルコでの自動車生産も21年中に打ち切ることを明らかにし、グローバルな生産体制見直しの一環であることをアピールした。

スウィンドン工場の従業員は約3,500人。ホンダは従業員の処遇について労使間の協議を行う。英国内では、解雇が決まった場合、部品メーカーなど裾野を含めて7,000人が失職するとの見方が出ている。

英国ではEU離脱が決まってから、金融関連企業を中心に同国から拠点を移す動きが相次いだ。メーカーも追随し、日本企業ではパナソニックが昨年10月に欧州本社を英国からオランダのアムステルダムに移転。ソニーも1月23日、英国にある家電部門の欧州統括会社をアムステルダムに移転すると発表した。

自動車メーカーでは、日産自動車が2月初め、英サンダーランド工場でのスポーツ用多目的車(SUV)「エクストレイル」の次期モデル生産を撤回すると発表。独BMWと英自動車大手ジャガー・ランドローバー(JLR)は「合意なきEU離脱」に直面した場合の物流の混乱などに備え、英国内にある工場の生産を4月に一時休止することを決めている。

このため、現地ではホンダの撤退もEU離脱問題が影響したと受け止められている。クラーク民間企業相は19日に議会で、「自動車業界、日本の投資家、ホンダは何カ月もEU離脱問題への懸念を明確に表明してきた」と発言。「合意なき離脱」の回避に向けて、議会が早期に離脱案を承認する必要性を強調した。