ECBが年内の利上げ断念、景気減速で方針転換

欧州中央銀行(ECB)は7日に開いた定例政策理事会で、今年の夏以降としていた利上げを来年以降に先送りすることを決めた。世界的な経済環境の悪化でユーロ圏の景気が減速していることを受けたもので、圏内の銀行に9月から低利の長期資金を供給することも決定した。

ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、ユーロ圏の景気の基調は弱く、「不透明感が蔓延している」と述べ、景気の先行きは厳しいとの見方を表明。主要政策金利を0%、中銀預金金利をマイナス0.4%とする超低金利政策を当面は継続する必要があるとして、年内の利上げを断念したことを明らかにした。

さらにECBは銀行の貸し渋り対策として、ECBが2014年から17年にかけて実施した「TLTRO」と呼ばれる長期資金供給オペ(金融機関が融資を増やすことを条件に長期資金を供給するオペ)を9月に再開することを決めた。21年3月まで実施する。

ECBはユーロ圏のデフレ回避と景気下支えを目的に15年3月から続けてきた異例の量的緩和を昨年12月に打ち切ったが、超低金利は少なくとも19年夏まで継続する方針を打ち出していた。しかし、米中貿易摩擦の激化や中国の景気減速、英国のEU離脱をめぐる混迷などで景気見通しが悪化していることから、路線修正を迫られた。

ユーロ圏の18年10~12月期の域内総生産(GDP)は前期比0.2%増で、伸び率は前期から横ばい。14年4~6月期以来、4年3カ月ぶりの低水準にとどまった。主要国ではイタリアが2四半期連続のマイナス成長となり、景気後退入りした。物価の基調も弱く、2月のインフレ率は前年同月比1.5%と、ECBが目標とする「2%近く」にほど遠い状態だ。

ECBは同日発表した最新の内部経済予測で、19年の予想成長率を1.1%とし、前回(12月)の1.7%から大幅に下方修正。20年も1.6%から1.2%に引き下げた。インフレ率に関しても、19年が1.2%、20年が1.5%とし、それぞれ前回の1.6%、1.7%から下方修正した。

ただ、ドラギ総裁はユーロ圏で雇用の改善、賃上げが続いていることから、今後も緩やかながら成長が続くとの見通しを表明。ユーロ圏が景気後退に陥る可能性は「極めて低い」と述べた。

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