米との通商交渉に「農産品含まず」、欧州委員が改めて表明

欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は7日、米国との通商交渉は当初の合意に沿って工業製品に対象を絞り、農産品は除外する方針を改めて示した。前日には米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表と会談したが、米側は自動車関税を取引材料に、農産品の市場開放などを求めており、通商政策をめぐる米欧間の対立が先鋭化している。

マルムストローム氏は米ワシントンD.C.のジョージタウン大学で講演し、EU内では「農業分野を含む包括的な協定を求める声は出ていない」と説明。米国との交渉を開始するため、農産品を除外する条件で加盟国の承認を取りつける方針を示し、「数週間」のうちに交渉開始の準備が整うとの見通しを示した。

欧州委のユンケル委員長とトランプ米大統領は昨年7月の首脳会議で、自動車を除く工業製品の関税撤廃に向けて交渉を開始し、その間は米国がEUからの輸入自動車に対する追加関税の発動を見合わせることで合意した。農産品についてはEU内で反対意見が根強いため、当面は交渉の対象から除外する代わりに、EU側が米国産大豆の輸入拡大に応じることで合意。双方は高官級の作業部会を立ち上げて交渉入りの準備を進めているが、米国内では農業分野も含めた包括的な協議を求める声が高まっており、協議は難航している。

トランプ氏は2月、EUとの通商協議で合意できない場合、EUから輸入する自動車に追加関税を課す方針を表明した。EU側に圧力をかけて農業分野で譲歩を引き出す狙いがあり、5月中旬までに自動車と自動車部品に対する追加関税の是非を判断するとしている。

これに対し、EU側は建設機械大手キャタピラーなどの米国製品に報復関税を課して対抗する構え。リストには事務機器大手ゼロックスや旅行かばん大手サムソナイト・インターナショナルなど、米国の代表的なブランドが含まれており、対象製品は総額200億ユーロに上るとされる。

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