ボーイングへの補助金継続は不当、WTO上級委がEUに軍配

世界貿易機構(WTO)の上級委員会は3月28日、米国による米航空機大手ボーイングへの継続的な補助金の提供は不当との最終判断を下した。補助金継続はWTO協定に違反すると訴えていたEUの主張を大筋で認めた格好。上級委は昨年、欧州のエアバスに対するEUの継続的な補助金は不当だとする米側の訴えを認めており、15年に及んだ航空機補助金をめぐるEUと米国の通商紛争は、両者の痛み分けで決着した。

EUと米国はエアバスとボーイングの新型機開発に相手側が不当な支援を行っているとして、WTOを舞台に2004年から提訴合戦を繰り広げてきた。今回、上級委が不当と判断したのは、ボーイングの最新鋭機「777X」の開発・製造を対象とした米ワシントン州の税制優遇措置。EU側はWTOが12年にボーイングへの補助金を協定違反と認定した後も、ワシントン州の税制優遇措置が継続しており、これによってエアバスが損害を受けたと主張していた。上級委はEU側の主張を認め、ボーイングへの補助金継続がエアバスの業績に悪影響を与えたと認定した。

上級委の決定を受け、欧州委員会のマルムストローム(通商担当)は「きわめて重要な歓迎すべき決定だ」とコメント。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は「米国が提供した補助金はEUと比べて小規模にとどまる」と指摘した。

WTOは不当な補助金で被った損害に対し、加盟国が報復措置を講じることを認めている。このため、今後はEUと米国がそれぞれ発動する報復関税の規模が焦点となる。

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