欧州委員会は2日、英国が一部の多国籍企業に適用していた税優遇措置は違法な国家補助に当たるとの見解をまとめ、英政府に対し該当する企業への追徴課税を命じたと発表した。対象となる企業の具体名は公表していない。英当局は速やかに本来の税額を算出し、徴収し損ねていた税金を回収する必要がある。
問題となっていたのは、外国子会社を利用した課税逃れの対抗策としてEUが導入した「外国子会社合算(CFC)税制」の免除規定。CFC税制は一定の条件にあてはまる外国子会社の所得を親会社の所得とみなして合算し、本国で課税する制度だが、英国では2013年、グループ内の別会社の余剰資金を活用した「グループファイナンス」に係る貸付金利を課税対象となる所得から除外する免除規定が導入された。欧州委は同規定が特定企業に対する優遇措置を禁止したEUの国家補助規則に違反する可能性があるとして、17年10月に本格調査に着手。ロンドン証券取引所、広告最大手WPP、航空サービス大手BBAアビエーション、酒類大手ディアジオなどが調査対象となっていた。
欧州委によると、英当局は13年~18年にかけて英国に本社を置く一部の多国籍企業にCFCルールの免除規定を適用し、外国子会社の利子所得を課税対象から除外していた。ベスタエアー委員(競争政策担当)は「英国は特定の多国籍企業に対して租税回避防止を目的とした課税ルールの適用を除外し、不当な優位性を与えた。これはEUの国家補助規則に抵触する」と指摘した。
欧州委は一部の加盟国が誘致や雇用創出の見返りに、大手企業に適用している税優遇措置を問題視し、14年に本格的な調査を開始。これまでにオランダ、ルクセンブルク、ベルギー、アイルランドに対し、米アップル、アマゾン、スターバックスなどへの追徴課税を命じている。