欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2019/4/15

EU情報

英のEU離脱期限を10月末まで延期、首脳会議で合意

この記事の要約

EU加盟国は10日に開いた臨時首脳会議で、英国のEU離脱期限を10月31日まで延期することで合意した。2日後の12日に取り決めがないまま離脱する「合意なき離脱」を回避し、英国議会が離脱協定案を承認するための時間を稼ぐ。た […]

EU加盟国は10日に開いた臨時首脳会議で、英国のEU離脱期限を10月31日まで延期することで合意した。2日後の12日に取り決めがないまま離脱する「合意なき離脱」を回避し、英国議会が離脱協定案を承認するための時間を稼ぐ。ただ、協定案が承認されるめどは立っておらず、離脱をめぐる情勢はなお流動的だ。

英政府とEUは2018年11月に離脱協定案で合意。英国は議会の批准を経て、3月29日に離脱する予定だった。しかし、EU加盟国アイルランドと英国の北アイルランドとの国境問題をめぐり、与党・保守党の強硬離脱派が反発し、下院が2度にわたって協定案を否決したことから、離脱期限が4月12日に延期された。

英国のメイ首相は、3月29日に実施された3度目の採決でも否決されたことを受け、合意なき離脱を避けるため、EUのトゥスク大統領(欧州理事会常任議長)に離脱期限の再延長を要請していた。

臨時首脳会議では、メイ首相が6月30日までの延期を要請した。これに対して、トゥスク大統領は英政府と議会の合意には時間がかかるとして、最長1年の延期を提案。迷走する英国に厳しい姿勢を示すフランスのマクロン大統領が長期の延期に異議を唱えた結果、10月末までの延期という妥協案がまとまり、メイ首相も受け入れた。マクロン大統領の反発に考慮し、延期には◇5月23~26日に予定される欧州議会選までに離脱しない場合は、英国が同選挙に参加する◇参加しない場合は6月1日に離脱する◇英国はEU残留中にEUの政策決定を妨害しない――という条件をつけることも決まった。

メイ首相は英国の欧州議会選参加に難色を示してきたが、合意なき離脱の回避を優先するため、受け入れざるを得なかった。首相は離脱期限が10月末まで延期されるものの、できる限り早期に議会から離脱案の承認を取り付け、選挙に参加しないまま円滑に離脱することを目指すとしている。

メイ首相は離脱案が3度目の採決で否決されたことから、打開策として最大野党・労働党と協議して妥協案を探る方針に転換した。労働党は関税同盟残留など、今後もEUとの緊密な関係を維持することを求めており、EU寄りの案がまとまる可能性がある。

ただ、これまでの協議で進展はない。今後も協議を続けるが、労働党内にはEU離脱の是非を問う国民投票の再実施によって離脱そのものを撤回しようとする勢力がある。保守党内の強硬離脱派がEU寄りの案に反発するのも必至で、調整は難航しそうだ。このため、保守党内では求心力が低下しているメイ首相に辞任を求める声が強まっている。

与野党で合意できない場合は、総選挙実施から合意なき離脱、国民投票の再実施による離脱撤回まで、あらゆる可能性があり、予断を許さない情勢だ。