欧州証券市場監督機構(ESMA)は3日、3回目となるEU域内の中央清算機関(CCP)に対するストレステスト(健全性審査)の実施概要を発表した。好ましくない市場環境に直面した際のCCPの耐性を見極め、潜在的な欠陥をあぶりだすのがストレステストの狙いで、今回は従来からの信用リスクと流動性リスクに加え、流動性コストに対する耐性を審査基準に追加する。
世界的な金融危機に対する反省から、店頭(OTC)デリバティブ市場ではCCPでの集中決済が義務化され、OTCデリバティブ取引の90%以上がCCPで清算されている。CCP清算の取引が拡大することで取引の透明性が高まり、当局や市場参加者はデリバティブ市場が抱えるリスクを把握しやすくなったが、リスクが集中するCCPに対する監督の重要性が増した。国際的な議論の末、銀行と同様に金融当局が共通のシナリオを設定し、清算参加者の破綻によって生じる損失をCCPが十分に吸収できるかどうかをチェックすることになり、ESMAは2014年と2017年にストレステストを実施した。
1回目のストレステストではカウンターパーティリスク(取引相手の信用リスク)に重点が置かれ、2回目は流動性リスクとCCPの業務活動に係るリスクオペレーショナルリスクへの対応が審査基準に加わった。さらに3回目の今回は、資金調達のために低価格で債権などを売却しなければならない、といった流動性コストに対する耐性が厳しくチェックされることになる。
ESMAは近く、域内で活動する16のCCPに対するストレステストに着手し、20年第2四半期をめどに結果を公表する。なお、EU離脱を控えた英国ではロンドン証券取引所傘下のLCH、ICEクリア・ヨーロッパ、LMEクリアが審査対象となっているが、EUとの合意がないまま離脱する無秩序離脱となった場合、3つの取引所は対象から除外される。