安倍晋三首相は25日、ブリュッセルのEU本部でトゥスクEU大統領、ユンケル欧州委員長と会談し、自由貿易を推進するため世界貿易機関(WTO)改革で協力することで一致した。会談後に発表した共同声明には、6月に大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議の成功に向け、協力体制を強化する方針などを盛り込んだ。
安倍首相は会談後の共同記者会見で、韓国による水産物の輸入規制をめぐり、WTO上級委員会が今月11日、韓国の措置を妥当とする最終判決を下したことを念頭に、WTOは「時代の変化に追いついていない。上級審にもさまざまな課題がある」と指摘。上級審が科学的な判断を避けたまま、日本の主張を認めて韓国側に是正を求めた紛争処理小委員会(パネル)の判断を破棄したことを暗に批判した。
英国のEU離脱を巡っては、離脱期限が最長で10月末に再延期されたことを踏まえ、「当面、合意なき離脱が回避されたことを歓迎する」と発言。日系企業や世界経済への悪影響が最小限になるよう、離脱プロセスが円滑に進むことを期待すると述べた。
一方、EU側は欧州で急速に影響力を強める中国を念頭に、市場を歪める国内企業への補助金や、進出企業に技術移転を強制する慣行を規制する必要があると強調。ユンケル委員長は「公正な競争を確保するため、日本とEUが協力してWTO改革を推進しなければならない」と述べた。