スイスの食品世界最大手ネスレは16日、スキンケア事業の売却に向け、スウェーデンの投資会社などが主導するコンソーシアムと独占交渉に入ったと発表した。売却額は102億スイスフラン（約1兆1,000億円）で、今年後半には売却手続きを終える見通しという。世界的に食品メーカーの競争が激しさを増す中、ネスレは事業の選択と集中を進めて収益力の強化を図る。
ネスレのスキンケア事業はにきび治療の「プロアクティブ」や洗顔・保湿剤「セタフィル」などのブランドを展開している。同部門は40カ国で5,000人以上の従業員を擁し、2018年の売り上げは約28億スイスフラン。
ネスレが独占交渉を進めているのは北欧最大のプライベートエクイティー（PE）投資会社のEQTパートナーズと、アラブ首長国連邦の政府系ファンドであるアブダビ投資庁（ADIA）が主導するコンソーシアム。このほか米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ（KKR）や、米アドベント・インターナショナルや英シンベンが主導する投資グループなどもスキンケア事業の買収に関心を示していたとされる。
ネスレをめぐっては、2017年にアクティビスト（物言う株主）として知られるダニエル・ローブ氏率いるヘッジファンドのサード・ポイントが同社株式を取得し、不採算事業の売却などを軸とする再編圧力を強めている。ネスレは昨年1月、米国の菓子事業をイタリアのチョコレート最大手フェレロに売却することで合意。9月にはベビーフードメーカーの米ガーバー買収で取得した生命保険事業を、米保険会社ウエスタン&サウザン・フィナンシャル・グループに売却すると発表した。さらにネスレは今年に入り、欧州を中心にハムやホットドッグなどを展開する「ヘルタ」も売却する方針を打ち出している。