フランス議会の上院は11日、大手IT企業を対象とする「デジタルサービス税」を導入する法案を可決した。同法案は7月初めに下院を通過しており、正式に成立した。EUでのデジタル課税は初となる。ただ、米政府は「GAFA」と呼ばれる同国巨大IT企業のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンを狙い打ちにした不当な措置と猛反発し、報復措置に乗り出す構えを示しており、新たな貿易摩擦に発展しそうな雲行きだ。
課税対象となるのは、売上高が全世界で7億5,000万ユーロ以上、仏国内で2,500万ユーロ以上のIT企業。ネット上の広告、個人情報の売買や、検索エンジンなどのプラットフォームを運営する企業、ネットを利用したサービス(配車アプリのウーバー、民泊仲介サイトのエアビーアンドビーなど)を提供する企業に、仏国内での売上高に3%を課税する。
このような課税制度を導入するのは、主要国では初めて。同課税は19年1月までさかのぼって適用される。仏政府は初年度で5億ユーロ程度の税収が見込めると推定している。
デジタル税は世界的に活動する多国籍IT企業の課税逃れを防ぐのが狙い。EUの現行の課税制度では、国内にオフィスや工場など物理的な拠点を持たない企業に対し、原則として法人税を課せない仕組みとなっており、EU内で国によって異なる課税ルールを利用したネット企業などによる課税逃れが問題になっている。
たとえばGAFAは、欧州の売り上げの大半をドイツ、フランス、英国が占めているが、欧州本部はグーグル、アップル、フェイスブックがアイルランド、アマゾンがルクセンブルクと、法人税率が低い国に置いている。
EUでは欧州委員会が18年3月にデジタル課税導入を提案したものの、アイルランドなどの反対で調整が難航し、合意に至ってない。このため仏政府は昨年12月、独自にデジタル税を導入すると発表していた。
仏のデジタル税は欧州や中国などの大手IT企業にも適用されるが、米トランプ政権はGAFAを標的とした不当な課税として警戒感を強めており、上院での採決に先立つ10日に米通商代表部(USTR)が外国の不公正な通商慣行に制裁を発動できる通商法301条に基づく調査を開始すると発表した。不当と認定すれば、仏製品への関税引き上げといった制裁を発動する可能性がある。
しかし、仏政府はルメール経済・財務相が「フランスは主権国家であり、税制は独自に決定する」と反論。米国の動きを「脅し」と批判し、「同盟国間では脅し以外の方法で問題を解決しなければならない」として、米国をけん制した。
EUではフランスのほか英国、イタリア、スペインなども同様のデジタル課税を導入する準備を進めている。