イタリア政府は9月30日、2020年の財政赤字について、国内総生産(GDP)比2.2%を目標とすることを閣議決定した。EUの財政規律で上限となっているGDP比3%を超えないものの、前政権が4月に打ち出した2.1%を上回り、赤字削減をめぐって欧州委員会と再び対立する可能性が出てきた。
EUはギリシャに端を発した債務危機の再発を防止するため、ユーロ参加国の財政監視強化策として、13年から各国の予算案を欧州委が事前に審査する制度を導入している。イタリアは19年の予算案をめぐり、18年6月に発足したポピュリズム(大衆迎合主義)政党「同盟」と左派「五つ星運動」の連立政権が財政赤字を従来の目標のGDP比0.8%を大きく超える同2.4%とすることを決定したため、欧州委と対立したが、最終的に2.04%に縮小することで合意し、過剰赤字是正手続きの発動を免れた経緯がある。
9月に発足した新連立政権は「五つ星運動」と中道左派「民主党」によるもので、反EUの極右「同盟」が外れたことから、EUとの協調路線を掲げている。20年の予算案で財政再建を重視するかどうかが、最初の試金石になるとして注目されていた。
閣議決定した財政赤字目標は、新政権が公約としている20年の付加価値税(消費税)引き上げ阻止を念頭に置いたもの。増税見送りで空く穴を埋めきれないため、赤字が膨らむとしている。
新政権は赤字拡大が小幅にとどまるため、EUが容認すると期待しているが、赤字幅は19年の見通しを上回る。さらに、EUが重視する構造赤字はGDP比1.4%と、19年の見通しの1.2%から0.2ポイント膨らむ。欧州委はイタリアの累積債務が20年にわずかながら縮小するが、GDP比135.2%と財政規律の上限である60%を依然として大きく上回ることもあり、政府が15日までに提出する予算案の修正を求める可能性がある。