EU司法裁判所は3日、EU加盟国の裁判所は米フェイスブックなどのインターネットプラットフォームに対して違法なコンテンツの削除を命じることができ、EU域外からの投稿も削除対象になるとの判断を示した。交流サイト(SNS)を運営する事業者は、中傷的なコメントや写真などが拡散しないよう監視を強化する必要に迫られそうだ。
今回の事案はオーストリア緑の党のグラヴィシュニク元党首がフェイスブックに対し、自身を中傷するコメントの削除を求めて訴えを起こしたのが発端。ウィーンの高等裁判所は2017年、グラヴィシュニク氏に関する侮辱的な内容の投稿をプラットフォーム上から完全に削除し、オーストリア以外の国からもそうした情報にアクセスできないようにすることをフェイスブックに命じた。フェイスブックは判決を不服として直ちに上訴。オーストリア最高裁は高裁の判決を支持したうえで、類似した内容の投稿についても削除命令を全世界で適用できるかどうか、EU司法裁に判断を求めていた。
司法裁は判決で、「EU法はフェイスブックのような事業者に対し、以前に違法と判断された内容と同等のコメントの削除を命じることを排除していない。さらに、EU法は国際法の枠組みの下で、EU域外からの投稿に対してこうした削除命令が適用されることも排除していない」と指摘した。
フェイスブックの広報担当は判決を受け、「フェイスブックにはプラットフォームで共有が可能なコンテンツかどうかについて説明するコミュニティー規定があり、現地の法律に違反した場合にコンテンツの流通を制限するための手続きを定めている」と強調。「今回の判決はさらに踏み込んだ内容で、言論の自由に関するある国の法律を他国に適用することはできないという、長年にわたり維持されてきた原則を損なう」と反論した。
専門家の間では、SNS事業者がひとたび違法と認定されたコンテンツと「同等」の内容を削除するよう求められる点について、類似性を判断する際の基準があいまいだとの指摘がある。フェイスブックのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はこの点について、定義を明確にするため「訴訟を起こす可能性がある」と述べた。