航空機補助金めぐり米が対EU報復関税発動、EU側も対抗措置の構え

トランプ米政権は18日、EUによる欧州航空機大手エアバスへの補助金が不当だとして、EUからの輸入品に追加関税を課す報復措置を発動した。EU側も同措置を受け、米製品に対して報復関税を発動する構えをみせている。米中の対立が長期化するなか、EUと米国の貿易摩擦が激化するのは避けられない情勢だ。

米国は世界貿易機関(WTO)の紛争処理機関が14日、EUからの輸入品に年間75億ドル相当の追加関税を課すことを正式に承認したことを受け、18日午前0時1分に報復措置を発動した。米通商代表部(USTR)によると、対象となるEU製品は約160品目に上り、民間航空機に10%、その他の工業品とワイン、チーズ、スコッチウイスキー、オリーブなどの農産品に25%を上乗せする。EUからの年間輸入額は約4,900億ドルに上り、報復関税の対象(75億ドル)が占める割合は約2%にとどまるが、畜産農家などEU側の生産者にとっては痛手となる。

欧州委員会のマルムストローム委員(通商政策担当)は18日、米国の措置を受けて声明を発表。報復関税の発動に踏み切った米国の判断は「極めて遺憾」としたうえで、「EUとして対抗措置を検討する以外に選択肢はなくなった」と表明した。EUは米政府によるボーイングへの補助金が不当だと主張し、WTOに200億ドル相当の報復関税を容認するよう求めている。4月に対象品目の暫定リストを公表しており、航空機、トラクター、ハンドバッグ、ワイン、水産加工品など幅広い製品が含まれている。WTOは2020年前半にも判断を示す見通しで、EUはそれを基に報復関税を発動する方針だ。

EUと米国はエアバスと米ボーイングに対する補助金の違法性をめぐり、2004年からWTOを舞台に争ってきた。WTO紛争処理小委員会(パネル)は両社に対する開発支援や優遇税制などが違法な補助金にあたるとの裁定を下し、双方に是正措置を命じた。しかし、EUと米国はともに相手がWTOの決定に従わず、引き続き補助金の支給を継続していると主張し、相互に再提訴。WTO上級委員会は18年5月、EUによるエアバスへの補助金継続は不当との最終判断を下したのに続き、今年3月には米国によるボーイングへの補助金継続も不当と認定。約15年にわたる紛争は両者の痛み分けとなっている。

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