ドイツ政府は16日の閣議で、建造物と交通部門を対象に導入する同国独自の二酸化炭素(CO2)排出権取引制度の大枠を承認した。CO2排出量を2030年までに1990年比で最低55%削減するという目標の実現に向けて9月に閣議決定した包括計画「温暖化防止プログラム2030」を踏襲したもので、年末までに法案を策定する方針だ。
エネルギー業界やエネルギー集約型の製造業は05年以降、EUの排出権取引制度(ETS)の対象となっている。EUはETS対象分野の域内CO2排出量を30年までに05年比で43%削減する計画だ。
一方、交通、建造物、小規模製造業、農業、廃棄物などETS以外の分野(非ETS分野)のCO2排出削減は各加盟国の責任で実現することになっている。ドイツは非ETS分野のCO2排出量を同38%圧縮することを義務付けられており、達成できない場合は他の加盟国から排出権を買い取らなければならなくなる。
こうした事態を避けるため、ドイツは独自の排出権取引制度を導入する。同制度は化石燃料を販売する際にCO2の排出権の購入を販売事業者に義務付けるというもので、21年に開始する。購入価格は25年まで固定価格とし、26年からは入札方式に移行する。
固定価格は初年度の21年が排出量1トン当たり10ユーロで、その後は22年が20ユーロ、23年が25ユーロ、24年が30ユーロ、25年が35ユーロと毎年引き上げられていく。
26年導入の入札では売りに出す排出権の上限量を年々、減らしていく。これにより排出権価格が上昇し、灯油やガソリンの需要が減少すると政府はみている。
ただ、落札価格は一定の範囲内に抑える。価格が低すぎると燃料需要の減少効果が弱まり、高すぎると消費者に過度の負担がかかるためで、下限額を35ユーロ、上限額を60ユーロとする。