アルセロールミタル、伊イルバ買収を撤回

鉄鋼世界最大手のアルセロールミタル(ルクセンブルク)は4日、伊鉄鋼大手イルバを買収する計画を撤回すると発表した。伊政府がイルバの粉じん問題への免責を取り消したためで、イルバ救済が宙に浮くことになる。

イルバは伊南部ターラントにある欧州最大級の製鉄所を運営する企業。同製鉄所から出る粉じんが周辺住民の健康被害を引き起こしたため、2014年に国有化されたが、赤字が続いたため政府が売却を決定。アルセロールミタルは伊製鉄会社マルチェガリア、大手銀行インテサ・サンパオロとコンソーシアム(企業連合)を結成し、18億ユーロで買収することで18年に合意していた。

伊政府はアルセロールミタルに対して、粉じん被害への免責を認めていた。しかし、9月に発足した新連立政権に加わる左派「五つ星運動」が反発し、免責を取り消すことが議会で決定。11月3日付で取り消しが無効となった。

アルセロールミタルはイルバ買収に先立って、18年11月から同社の製鉄所を借り受け、操業を開始していた。免責取り消しは政府との買収合意に反するとして、操業停止と買収撤回を表明した。

一方、伊政府内ではアルセロールミタルの決定について、免責取り消しは表向きの理由で、イルバが現在も多額の赤字を出していることが主因と反発する声が出ており、政府は再考を求めて協議を進める方針だ。

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