EU司法裁判所は12日、イスラエルが占領するユダヤ人入植地で作られた食品や農産品の販売に際し、「入植地産」の表示を義務付けた加盟国の措置を支持する判断を下した。消費者の誤解を避けるため、正確な原産地表示で「イスラエル産」と区別する必要があると説いている。
イスラエルによる占領が続く東エルサレムとヨルダン川西岸、さらにシリアとの境界に位置するゴラン高原での入植活動は国際法違反とされ、EUはイスラエルの主権を認めていない。ユダヤ人入植地ではワインやくだもの、野菜などが生産され、その多くがイスラエル産としてEU向けに輸出されている。EU内では一部の加盟国が自主的に入植地産のラベル表示を実施してきたが、欧州委員会は2015年、ユダヤ人入植地を原産地とする農産品などを域内で販売する際、入植地産と表示することを加盟国に求める指針をまとめた。
今回の判決は、フランス政府が欧州委の指針に沿って入植地産の表示を義務化したのは不当だとして、パリに本部を置くユダヤ人団体Organisation
Juive
Europeenneと、ユダヤ人入植地のヨルダン川西岸でワイン醸造所を経営するPsagotが仏経済・財務省を提訴した事案に対するもの。仏最高裁判所が司法裁に対し、食品のラベル表示に関するEUルールについて解釈を求めていた。
司法裁は、EUの食品表示ルールは消費者が「倫理上の配慮や国際法の順守状況」に基づいて商品を選べるよう、明確な原産地表示を義務付けていると説明。実際にはユダヤ人入植地で生産された食品や農産品が「イスラエル産」と表示された場合、消費者は正確な情報にアクセスできず、購入の意思決定に深刻な影響が及ぶ可能性があると指摘した。
イスラエル外務省は判決を受け、強い遺憾の意を表明した。カッツ外相は「世界各地で200件を超える領土紛争が起きているにもかかわらず、イスラエル以外の原産地表示は問題にしておらず、これは明らかな二重基準だ」とEU司法裁を非難。EU加盟国の外相に接触し、入植地産のラベル表示を実施しないよう働きかけると述べた。