米産牛肉の輸入拡大、欧州議会が承認

欧州議会は11月28日の本会議で、肥育ホルモン剤を使用しない米国産牛肉のEUへの輸入拡大を賛成多数で承認した。2020年から米国に割り当てる無関税輸入枠を段階的に拡大する。EU・米間では航空機補助金や自動車関税をめぐり貿易摩擦が激化しているが、牛肉の輸入規制をめぐる長年の対立がようやく決着した。

本会議では賛成457、反対140、棄権71で米国産牛肉の輸入を拡大する計画が承認された。EUは肥育ホルモン剤を使用しない牛肉に対し、年間4万5,000トンの無関税輸入枠を設けているが、輸入枠全体の規模は維持したまま、米国産への割り当てを当初の1万8,500トンから7年後に3万5,000トンまで拡大する。ただし、世界貿易機関(WTO)の規則に基づき無関税枠には米国産以外の牛肉も含まれているため、他国の合意を得る必要がある。

欧州議会国際貿易委員会のランゲ委員長は声明で「欧州議会のメッセージは明白だ。EUは米国との貿易摩擦を和らげたいと考えているが、米国に対しても緩和に向けた同様の取り組みを望む」と述べた。

ホルモン牛肉をめぐるEUと米国の対立は1980年代に遡る。EUは81年、発がん性などを理由に域内での肥育ホルモン剤の使用を禁止。89年には肥育ホルモンを使用した食肉の輸入も禁止した。しかし、WTOは98年、EUの禁輸措置は科学的なリスク評価に基づくものではないとする米側の主張を認め、米国がEUに対して制裁措置を講じることを認める裁定を下した。さらにWTO上級委員会は2008年、米国による制裁措置は禁輸への対抗策として正当化できるとの判断を示したため、EUは09年、肥育ホルモンを使用しない牛肉について、年間4万5,000トンの無関税輸入枠を設けることを決めた。

ただ、この無関税枠には豪州やアルゼンチン、ウルグアイ産なども含まれているため、米国産のシェアが縮小傾向にあることに不満を募らせた米国は16年、EUに対する制裁措置の再実施に向けた調査を開始。紛争解決に向けた協議の末、EU側が今年7月に米国に対する無関税輸入枠の割り当てを拡大する合意案を受け入れ、8月に合意文書に署名した。

上部へスクロール