EUは5日開いた財務相理事会で、米フェイスブックが発行を計画している「リブラ」など暗号資産(仮想通貨)への対応について協議し、リスクや監督上の課題が解決されるまで域内での発行を認めるべきではないとの方針を決定した。また、中国がデジタル通貨の発行準備を進めていることなどを念頭に、暗号資産を規制する域内ルールの策定に着手することを決めた。
リブラはフェイスブックがクレジットカード大手ビザ、マスターカードや配車アプリ大手ウーバーなど27社と組んで、2020年の発行を目指しているデジタル通貨。ビットコインなど他の仮想通貨と異なり、法定通貨など実質資産に裏付けされているため価値が変わらない点が最大の特徴だが、各国当局から投資家保護、マネーロンダリング(資金洗浄)、テロ資金への流用といったリスクへの対応を懸念する声が上がっている。
財務相理は共同声明で、デジタル通貨は低コストで迅速な支払いを可能にする一方、消費者保護やサイバーセキュリティなどの面で課題があると指摘。民間主導によるデジタル通貨の計画が既存の金融政策に悪影響を及ぼすことがあってはならないと強調した。
財務相理はまた、EU内で欧州中央銀行(ECB)に公的なデジタル通貨の発行を求める動きが出ていることを受け、ECBや各国中銀のデジタル通貨や決済システムのデジタル化に関する取り組みに留意すると表明した。ECBは理事会に提出した文書で、欧州で現金の利用が縮小すれば公的なデジタル通貨が必要になるとの認識を示したうえで、リスクや悪影響を詳細に分析する必要があると指摘している。