英下院は9日、EU離脱に必要な関連法案を賛成多数で可決した。同法案は上院でも近く承認され、成立する見込みで、英国が1月31日に離脱することが確定。離脱問題は自由貿易協定(FTA)など将来の関係の構築に向けた交渉に焦点が移る。
英政府がEUと合意した離脱協定案をめぐっては、与党・保守党が下院で過半数を割り込んでいたことから、これまで何度も否決され、離脱が迷走。何の取り決めもないまま離脱する「合意なき離脱」の懸念が高まっていた。
19年7月に就任したジョンソン首相は、こうした状況を打開するため、昨年12月に総選挙に踏み切り、保守党が圧勝して単独で過半数を確保した。これを受けて、離脱協定を国内法に反映させるための関連法案は賛成330票、反対231票で承認された。
英国とEUは離脱後も20年12月末まで移行期間が設けられるため、1月末に離脱しても当面は現状維持の関係が続く。移行期間中にFTAなどの交渉を進めることになる。
EUと日本、韓国、カナダなどとのFTAは交渉妥結までに5年以上を要したが、英国との交渉期間は11カ月と限られている。交渉分野はFTA以外にも多岐にわたり、同期間内に完了させるのは難しい。その場合、「合意なき離脱」と同様の状況に陥る。
それでもジョンソン首相は期間内の完了を言明しており、関連法案には政府による期間延長を禁止することを盛り込んだ。8日に欧州委員会のフォンデアライエン委員長と会談した際にも、移行期間を延長しない方針を伝えた。
これに対して、フォンデアライエン委員長は20年末までにすべての交渉を妥結するのは「基本的に不可能」との見解を表明。EUのバルニエ首席交渉官も9日に行った講演で、11カ月間で妥結するよう「最善を尽くす」としながらも、「(期限内に)全分野で合意できるとは見込んでいない」と述べ、重要分野を優先して交渉を進める方針を示した。