欧州証券市場監督機構(ESMA)のマイヨール長官は9日、英国に拠点を置くデリバティブ(金融派生商品)の清算機関について、英国のEU離脱後も在EUの顧客にサービスを提供するための条件を満たしているかどうかの評価を6月末までに完了できるとの見通しを示した。ただし、最終的にはEUと英国の通商交渉によって決まると述べ、EU規制の枠組みから離脱する以上、たとえ大部分のEUルールを維持したとしても、英国の金融サービスが自動的にEU市場にアクセスできるわけではないとくぎを刺した。
企業が相場変動のリスク回避などに利用しているデリバティブ取引では、欧州における中央清算機関としてロンドン証券取引所(LSE)グループのLCHクリアネットが圧倒的なシェアを握っている。2020年末の移行期間終了後にEU内に拠点を置く金融機関がLCHなど英国の清算機関を利用できなくなり、デリバティブ取引の決済処理が滞って市場に深刻な影響が及ぶことがないよう、EUと英国は6月末までに同等性評価の作業を完了することで合意している。
マイヨール氏は記者団に対し、「技術的には6月末までの評価完了は可能だと考えている。ただ、ここでは明らかに政治的な交渉が重要になる」と指摘。「現時点では英国の清算機関にEUルールが適用されているため、同等性の評価自体はさほど複雑ではない。最終的な判断は今後の交渉によって決まる」と述べた。