2020/2/10

EU情報

EUが英とのFTA交渉などの基本方針発表、公平な競争環境を最優先

この記事の要約

欧州委員会は3日、EUを離脱した英国との将来の関係の構築に向けた交渉の基本方針案を発表した。

英国は1月31日にEUを離脱したが、20年末までは移行期間となるため、貿易など基本的な関係は変わらない。

移行期間は22年12月末まで延長することが可能となっているものの、英国は延長しない方針で、「FTAなしでの離脱」の懸念が浮上している。

欧州委員会は3日、EUを離脱した英国との将来の関係の構築に向けた交渉の基本方針案を発表した。焦点の自由貿易協定(FTA)では、公平な競争環境を確保することを最優先し、関税ゼロの維持には英国が競争法などEUのルールに従うことを求める。しかし、英ジョンソン首相は同条件に反発しており、交渉の難航が必至な情勢。期限である20年末までの合意が危ぶまれている。

英国は1月31日にEUを離脱したが、20年末までは移行期間となるため、貿易など基本的な関係は変わらない。同期間中に貿易や安全保障、外交、司法での協力など幅広い分野での将来の関係をめぐる交渉をまとめることになっている。

最大の焦点となっているのはFTA締結に向けた交渉。双方とも関税ゼロを続けることを望んでいるが、EUのルールに縛られない形で引き続き関税なしで貿易できるようにしたい英国側に対して、EU側は「いいとこ取り」は許さないとけん制し、離脱前から火花を散らしていた。

欧州委が公表した交渉方針案は予想通りの内容。英国がEUと関税なしの貿易を続けるためには、公平な競争環境が必要として、英国がEUの競争法や公的補助、環境、労働者の権利などに関するルールに従うことを求める意向を表明した。

一方、ジョンソン首相は同日に国内で行った演説で、国家の主権を重視する姿勢を鮮明に打ち出し、「自由貿易協定でEUのルールを受け入れる必要はない」と発言。EUとカナダが締結した協定と同様のFTAを目指す方針を示した。「カナダ方式」では、同国はEUのルールに合わせなくても、ほとんどの関税が撤廃される。

さらにジョンソン首相は、仮にEUとFTAを締結できなくても英国は「大いに繁栄できる」と述べ、合意なしで新たな関係に突入することも辞さない構えを示した。この場合、双方の貿易は世界貿易機関(WTO)のルールに沿ったものとなり、関税が復活することになる。

交渉では漁業権も大きな焦点となる。EUの共通漁業政策から離脱する英国が、自国水域でのEU漁船の操業権を制限することをちらつかせているためだ。EU側は現状維持を求めており、欧州委は同問題をめぐる交渉をFTAの一環として進め、7月1日までの妥結を目指すことを交渉方針案に盛り込んだ。これに対してジョンソン首相は「検討する」としながらも、「英国が独立した沿岸国という事実が反映されなければならない」と釘を刺した。

EUは加盟国から交渉方針の承認を取り付けた上で、3月から英国との交渉に入る見通し。実質的な交渉期間は10カ月に限られる。英国が念頭に置くカナダとEUのFTAでは、妥結まで7年がかかっており、この短い期間に妥結にこぎ着けるのは難しいとの見方が大勢だ。移行期間は22年12月末まで延長することが可能となっているものの、英国は延長しない方針で、「FTAなしでの離脱」の懸念が浮上している。

ジョンソン首相は離脱条件を定める離脱協定案をめぐる交渉で、「合意なき離脱」も辞さない強硬な姿勢を突き付け、EU側が拒否していた見直しを勝ち取った経緯がある。今回も同戦略で交渉に臨む構えだが、EUのバルニエ首席交渉官は3日の記者会見で「合意できない事態に備える」と述べ、交渉で譲歩しない姿勢を示した。