英携帯大手ボーダフォン・グループは5日、欧州の通信網の中核部分から中国の華為技術(ファーウェイ)の製品を排除する方針を明らかにした。英政府が1月下旬、次世代移動通信システム「5G」通信網へのファーウェイの参入を制限したことを受け、他の欧州諸国が同様の規制を打ち出した場合に備える。他社製品への交換に必要な費用は約2億ユーロと試算している。
米トランプ政権は安全保障上の懸念を理由に、5G通信網からファーウェイ製品を排除するよう同盟国に求めているが、英政府は同社製品を限定的に容認することを決めた。ただし、ネットワークの中核部分のほか、核関連施設や軍事施設など機密性の高い場所からは排除し、基地局など非中核部分での使用についても全体の35%を上限とする方針を打ち出している。
一方、欧州委員会は1月末に公表した5Gの安全性強化に向けた勧告で、加盟国に対し「高リスク企業」がネットワークの中核部分に参入するのを制限または阻止できる仕組みを導入するよう促す一方、ファーウェイ製品の完全な排除は求めなかった。すでに欧州市場で同社製品が広く使用されている現状を踏まえた措置で、最終的な判断は各国政府に委ねられる。
ファーウェイ製品の扱いについて、現在のところ英国以外は明確な判断を示していないが、ボーダフォンは欧州全域で英国と同じ基準を適用する。ニック・リード最高経営責任者(CEO)は、欧州諸国で英国と同様、非中核部門で35%を上限とする規制が導入された場合、本格的な5Gサービスの実用化が2~5年遅れると指摘。こうした事態に備えてファーウェイ製品を欧州の中核ネットワークから排除し、他社製品に交換すると表明。それには「約2億ユーロの費用と5年程度の期間」を要するとの見通しを示した。
こうした中、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は6日、英政府が5G通信網へのファーウェイの参入を限定的に容認したことをめぐり、トランプ米大統領がジョンソン英首相との電話会談で激高したと報じた。同紙によると、英政府高官は「ジョンソン首相は市場を多様化し、少数の企業による市場独占を打破するため、同じ目的を持つ国同士が協力する重要性を強調した」とコメントしたという。報道を受けたロイター通信の取材に対し、首相官邸はFTに掲載されたコメントをくり返し、つけ加えることは何もないと述べた。