米通商代表部(USTR)は14日、EUによる欧州航空機大手エアバスへの補助金が不当だと認定した世界貿易機関(WTO)の判断に基づき、EUから輸入する航空機に対する追加関税を現行の10%から15%に引き上げると発表した。3月18日から適用する。EUへの圧力を強めて補助金の撤廃を迫る狙いで、EUと米国の貿易摩擦が激化する可能性がある。
トランプ政権は2019年10月、WTOがエアバスへの補助金が不当だとして、EUからの輸入品に年間75億ドル相当の追加関税を課すことを承認したことを受け、EUからの輸入品に追加関税を課す報復措置を発動した。エアバス機の製造を支援するフランス、ドイツ、スペイン、英国から輸入する民間航空機に10%、その他の工業品とワイン、チーズ、スコッチウイスキー、オリーブなどの農産品に25%を上乗せするという内容で、対象となるEU製品は約160品目に上る。
USTRは12月に入り、EUがエアバスに対して違法な補助金の拠出を続けているとの米側の主張をWTOが改めて認めたことを受け、EUに課している報復関税について追加措置の原案を発表。対象品目に航空機部品などを加えるほか、追加関税の税率を最大100%まで引き上げることなどが盛り込まれていた。
USTRによると、ワインやチーズなどに対する追加関税の税率は引き続き25%とし、3月5日に対象品目リストを一部修正するという。
EUと米国はエアバスと米ボーイングに対する補助金の違法性をめぐり、04年からWTOを舞台に争ってきた。EUは米政府によるボーイングへの補助金が不当だと主張し、WTOに200億ドル相当の報復関税を容認するよう求めている。昨年4月に対象品目の暫定リストを公表しており、航空機、トラクター、ハンドバッグ、ワイン、水産加工品など幅広い製品が含まれている。WTOは年内に判断を示す見通しで、EUはそれを基に報復関税を発動する方針だ。