英政府が移民受け入れに「ポイント制」導入、単純労働者排除へ

英政府は19日、EU離脱の移行期間が終了する2021年1月以降の移民政策の概要を発表した。単純労働者を排除し、世界中から高度な人材を集めるのが狙いで、移民希望者に年収、技能などに応じてポイントを与え、一定の点数を超えた人に限って就労を認める「ポイント制」を導入する。

新制度では、英国企業での就職が内定し、70点以上のポイントを持つ人が受け入れの条件となる。ポイントは年収、技能、学歴、英語力などを基準に決まる。年収は2万5,600ポンド(約370万円)以上で最高点の20点が与えられる。2万480ポンドを下回ればポイントはつかない。必要な技能を持つ人、必要なレベルの英語力を持つ人にも20ポイントを与える。このほか、博士号取得者などを優遇し、特別ポイントが加算される。

移民のポイント制は豪州で導入されているが、事前の就職内定という規定はなく、入国してから職を探すことができる点が異なる。

これまで英国ではEUのルールに基づき、EU出身者は自由に就労できた。このため、2004年のEU東方拡大から、中東欧などからの移民が急増。これが国内の雇用を奪うとの懸念が広がり、EU離脱の是非を問う国民投票の実施につながった。

新制度はEUと域外の出身者のどちらにも同等に適用される。すでに在留している300万人以上のEU出身者には適用されない。新ルール導入には議会の承認が必要となるが、下院で与党・保守党が過半数を大きく上回る議席を握っていることから、承認は確実だ。

新ルールによってEU出身者が英国で就労するのは難しくなる。内務省によると、04年以降にEUから流入した移民にポイント制を適用するとすれば、70%が“不合格”になるという。

一方、域外出身者に関しては、これまで3万ポンド以上の年収があることが条件だったため、ハードルは下がることになる。高度な人材と認定されるには大学卒であることが必要だったが、英国の高校の一般教養過程(日本の大学1年生が習う内容に匹敵)修了者に与えられる「Aレベル」に相当する学歴を持つ人も認定対象になる。

内務省は新制度について、英経済が「安価な低技能の労働者に依存することを終わらせる」として、海外から流入する単純労働者の排除を堂々と宣言。科学者、技術者、研究者といった高度な人材を優遇していくことを明言した。

英国では建設、飲食、農業、介護などの現場が安価な外国人労働者に支えられてきた。このため、経済界では新制度によって、これらの職種が人手不足に陥るとの懸念が浮上している。最大野党の労働党は、政府は結局、こうした分野の労働者不足を補うため、多くの例外規定を設けざるを得なくなるとして、新制度は「無意味だ」と批判した。

上部へスクロール