アリタリアへの公的支援、欧州委が本格調査へ

欧州委員会は2月28日、経営破綻した伊アリタリア航空に対するイタリア政府の資金支援がEUの国家補助規定に抵触していないか、本格調査を開始したと発表した。伊政府が2017年に実施した総額9億ユーロのつなぎ融資については既に調査が進められており、19年12月に閣議決定した4億ユーロの追加融資が新たな調査の対象となる。

アリタリアは2001年の米同時テロ以降に経営が悪化し、近年は格安航空会社(LCC)や高速鉄道との競争で業績が低迷。17年3月に大規模な人員削減を柱とする経営再建策をまとめたが、従業員が反対して株主から追加出資を受けることができなくなったため、自主再建を断念。同年5月から政府の管理下で売却先を模索している。

伊政府はアリタリアが運航を継続するための資金として、17年5月に6億ユーロ、同年10月に3月に3億ユーロのつなぎ融資を実施。19年7月には政府が全額出資するイタリア国鉄「フェロビエ・デッロ・スタート(FS)」を中心に、アパレル大手ベネトングループの子会社で高速道路や空港を管理するアトランティア、米デルタ航空、伊財務相の4者がアリタリアの再建を目指すことで合意した。しかし、リストラを含めた事業計画をめぐって交渉が難航。支援に意欲を示していた独ルフトハンザも出資の意向を撤回し、再建計画は暗礁に乗り上げている。

こうした中で伊政府は昨年12月、20年5月までの事業継続と、その間に売却先を見つけるための緊急措置として、4億ユーロの追加融資を決定した。政府は売却に向けて合理化を進めるための資金であり、補助金ではないと説明しているが、欧州委には同措置が違法な補助金にあたるとの苦情が多数寄せられていた。

EUの国家補助規定は特定の企業の救済を目的とする公的支援について、再建計画によって長期にわたる事業継続が可能で、市場競争が著しく阻害される恐れがないことなどを認可の条件としている。伊政府が17年に実施した総額9億ユーロのつなぎ融資をめぐっては、欧州委は返済期限の延長などを問題視し、18年4月から調査を進めている。

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