欧州委が医薬品供給に関する指針発表、加盟国に輸出制限や過剰備蓄撤回を要請

欧州委員会は8日、新型コロナウイルスの感染拡大により医薬品が不足する事態を回避するため、EU全体で合理的な医薬品の供給と使用を徹底するための指針を発表した。新型コロナウイルス感染症の治療に使用される医薬品などが不足する恐れがあるとして、製薬業界に増産を促すと共に、加盟国に対し医薬品の輸出制限や過剰な備蓄を控えるよう求めている。

欧州委によると、新型コロナ感染者に投与されるパラセタモールなどの解熱剤や抗生物質、人工呼吸器を装着する際に必要な筋肉弛緩剤や麻酔薬、さらに糖尿病治療で使用されるインスリンなどが一部の加盟国で不足する恐れがある。新型コロナ対策で加盟国が実施している医薬品の輸出規制や備蓄強化、外出制限による工場の稼働停止、国境管理の厳格化に伴う物流の混乱などが主な要因。欧州委は3月、人工呼吸器やマスクなどと共に新型コロナ感染者向けの医薬品をEUとして戦略的に備蓄する計画を打ち出したが、一部加盟国の医療機関は依然として深刻な供給不足に直面している。

欧州委はこうした現状を踏まえ、加盟国に対して医薬品の輸出制限措置を解除すると同時に、過剰な備蓄を控えるよう要請。さらに不安をあおるような虚偽情報によって国民が買いだめに走ることのないよう、必要な対策を講じるよう求めた。

一方、製薬業界に対しては、在庫状況や生産能力を正確に把握したうえで増産体制を確立すると同時に、各社が連携して危機的状況にある医療機関への供給を支援するよう要請。さらに医療機関に対しては、医薬品の処方に関する既存ルールを見直し、過剰処方を防ぐ一方、有効期限を延長するなどして医薬品の最適な使用を推進するよう求めている。

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