欧州証券市場監督庁(ESMA)は9日、EU域内で活動する投資ファンドの運用者に義務付けている運用報告書の提出期限に関連して、各国当局に対し、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて加盟国が実施している外出制限措置を考慮して対応するよう要請した。人の移動や企業活動を禁止するロックダウン(投資封鎖)などの対策が講じられる中、期限内に監査済みの報告書を提出することは困難が予想されると指摘。2019年12月期の年次報告書については2カ月、半期報告書は1カ月の期限延長を勧告した。
UCITS(パスポート制度によりEU全域で販売が認められている投資ファンド)、ヘッジファンドやプライベートエクイティ(PE)などのオルタナティブ投資ファンド(AIF)、欧州ベンチャーキャピタルファンド(EuVECA)、欧州社会起業家ファンド(EuSEF)の運用者は年度または半期ごとに運用報告書の作成を義務付けられている。例えばUCITSファンドの運用者は、監査済みの年次報告書を会計期間の終了日から4カ月以内(19年12月期の場合は4月末まで)、半期報告書を2カ月以内(2月末まで)に提出する必要がある。
ESMAは声明で「各国で実施されている新型コロナウイルスの感染拡大防止のための外出制限措置に伴い、ファンドマネジャーや監査法人が報告期限を順守するのが困難になっている現状を理解している。ESMAはこうした状況で各国当局がリスクベースのアプローチを採用し、市場参加者に対する監督上の処分を優先しないことを期待している」と表明。運用報告書の提出期限に猶予期間を設けるよう促した。