米がWTOにボーイングへの税優遇廃止を通知、EUの報復措置を牽制

米通商代表部(USTR)は6日、航空機メーカーへの補助金をめぐる米・EU間の通商紛争に関連して、米ボーイングに対する税優遇措置を廃止したことを世界貿易機関(WTO)に通知したと発表した。EUは同措置を不当な補助金と主張し、WTOに200億ドル規模の報復関税を容認するよう求めている。USTRは税優遇の廃止により「対米報復の正当な根拠がなくなった」と指摘し、EUに報復関税を発動しないよう求めた。

ボーイングはワシントン州から16年間にわたり、年間1億ドル規模の税控除を受けてきた。しかし、WTOの紛争処理機関がEU側の主張を認めて米国に対する報復措置を認めた場合、ボーイング機にも巨額の追加関税が課される見通し。このため同社は2月、ワシントン州に優遇措置を適用しないよう申し入れ、同州議会は3月、ボーイングに対する税優遇撤回法案を可決した。

ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は声明で「ワシントン州が税優遇措置を廃止したことで、米国はWTOの是正勧告を完全に実行したことになり、この紛争は決着する。これはEUがいかなる米国製品にも報復関税を課す正当な根拠がないことを意味する」と強調。EU側もエアバスに対する補助金を打ち切るよう、引き続き是正を求めていく考えを示した。

EUと米国はボーイングと欧州エアバスに対する補助金の違法性をめぐり、2004年からWTOを舞台に争ってきた。WTO上級委員会は19年までに、双方の補助金を共に不当と認定した。これを受けて米国は19年10月、航空機やワイン、チーズなど約160品目のEU製品に年間75億ドル相当の追加関税を課す報復措置を発動。その後、EUがエアバスに対して違法な補助金の拠出を続けているとの米側の主張をWTOが改めて認めたことを受け、今年3月には航空機に対する追加関税を10%から15%に引き上げた。一方、EU側も昨年4月に報復関税の対象品目リストを公表済みで、WTOは6月にも最終判断を示すとみられている。

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