欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2020/6/22

総合 – 欧州経済ニュース

復興基金で合意できず、7月中旬に再協議=EU首脳会議

この記事の要約

EU27カ国は19日に開いたテレビ首脳会議で、新型コロナウイルス感染が収束した後の域内経済の再建を支援する復興基金の制度設計について協議したが、基金の規模や配分方法、3分の2が返済不要の補助金となる点などで折り合いがつか […]

EU27カ国は19日に開いたテレビ首脳会議で、新型コロナウイルス感染が収束した後の域内経済の再建を支援する復興基金の制度設計について協議したが、基金の規模や配分方法、3分の2が返済不要の補助金となる点などで折り合いがつかず、合意に至らなかった。7月中旬の首脳会議での合意を目指して調整を進める。

加盟国は4月下旬の首脳会議で同基金を創設することで合意したが、規模や財源など詳細は決まっていない。欧州委員会が5月末に発表した案では、基金は7,500億ユーロ規模。共通債券を欧州委が発行し、市場で資金を調達する。EUの次期中期予算(対象期間2021~27年)に組み込み、5,000億ユーロを補助金、残る2,500億ユーロを融資の形で、新型コロナの被害が大きい国を中心に配分する。

同案をめぐっては、「倹約4カ国」と称されるオランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンが難色を示していた。共通債によって財政が厳しい南欧諸国などの債務を財政健全化に努めてきた国々が肩代わりすることになるという主張だ。基金の規模、大半が補助金となる点も問題視している。

今回の首脳会議では、共通債発行に関しては4カ国が譲歩し、全加盟国が原則的に承認した。しかし、4カ国が基金の規模削減、全額を融資とすることを求め、合意できなかった。このほか、各国への基金の配分に関して、欧州委案では2015~19年の人口、1人当たりの国民総生産(GDP)、失業率を基準とすることになっているが、これでは新型コロナによる経済損失の規模が反映されないという意見も出た。共通債で調達した資金の返済の財源についても結論を持ち越した。

EUは7月中旬に首脳会議を開き、同問題を再協議する。それまでにミシェル大統領(欧州理事会常任議長)が各国首脳と意見をすり合わせ、具体的な提案をまとめる方針だ。このところ首脳会議は新型コロナ感染拡大防止のためテレビ会議方式となっているが、可能ならば通常の方式に戻し、連帯感を高めて合意を目指す。