欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/8

総合 – 欧州経済ニュース

ECBが追加利下げ決定、ABSなどの購入開始も

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は4日に開いた定例政策理事会で、追加金融緩和を決めた。ユーロ圏の景気停滞、デフレ懸念に対応するもので、ユーロ圏18カ国に適用される最重要政策金利を現行の0.15%から0.1ポイント引き下げ、過去最低 […]

欧州中央銀行(ECB)は4日に開いた定例政策理事会で、追加金融緩和を決めた。ユーロ圏の景気停滞、デフレ懸念に対応するもので、ユーロ圏18カ国に適用される最重要政策金利を現行の0.15%から0.1ポイント引き下げ、過去最低の0.05%に設定。民間金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)のマイナス幅も0.1%から0.2%に拡大する。さらに、銀行が持つ融資債権を証券化した資産担保証券(ABS)と担保付き債券(カバードボンド)の買い入れを10月に開始することも決めた。

ECBは6月に0.1%の利下げと中銀預金金利のマイナス化、新たな長期資金供給オペ(LTRO)の実施を決定した。景気悪化とデフレの懸念が強まる中、追加金融緩和を求める声が強まっていたが、市場ではECB利下げと9月に開始されるLTROの効果を見極めるため、年内は様子見に徹すると見方が圧倒的に多かった。

予想外の金融緩和に踏み切った要因となったのは、景気と消費者物価の動向。8月中旬に発表されたユーロ圏の2014年4~6月期の域内総生産(GDP)は前期比で横ばいとなり、ゼロ成長にとどまった。また、8月のインフレ率は、約5年ぶりの低水準となる前年同月比0.3%に低下し、ECBが目標値とする2%との差が一段と拡大。デフレ突入がいよいよ現実味を帯びてきた。ECBも同日発表した最新の内部経済予測で、ユーロ圏の14年のGDP予想伸び率を0.9%とし、前回(6月)の1%から0.1ポイント下方修正。予想インフレ率を0.7%から0.6%に引き下げた。

ECBはこうした状況を受けて、追加金融緩和を決めた。特に預金金利のマイナス幅拡大と、ABS、カバードボンドの買い入れによって、銀行の貸し渋りを改善し、実体経済に回る資金を拡大したい考えだ。ABSとカバードボンドの買い入れ規模は未定。10月の政策理事会後に詳細を発表する。

主要国では米国、英国が景気対策として、紙幣を増発し、国債などを大量購入する量的緩和策を導入した。ECBのドラギ総裁も、同措置導入をちらつかせてはいるが、理事会内部で反対意見が根強いことから見送ってきた。ドラギ総裁は理事会後の記者会見で「理事会では、さらなる緩和を支持する理事がいたが、もっと小規模の緩和を求める理事もいたため、中間点で決着した」と述べた。

今回の利下げなどでユーロ売りが進み、同日に13カ月ぶりの低水準まで下落した。ユーロ圏の輸出競争力を強化する上では、追い風となる。ただ、市場では今回の金融緩和について、効果はユーロ安に限定されるとの見方が有力。利下げ幅が小さく、ABSとカバードボンドの買い入れでは国債購入のような効果は見込めないとして、本格的な量的緩和が必要との声が多い。ドラギ総裁もインフレ率の低迷が長期化するようであれば「非常的措置」の実施も辞さないと述べており、量的緩和の観測が強まりそうだ。