英国のジョンソン首相は6月30日、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けた国内経済の再生に向けた景気対策を発表した。50億ポンド(約6,600億円)を投じてインフラ整備を迅速に進めるという内容だ。首相は米国のフランクリン・ルーズヴェルト大統領が1930年代の大恐慌時に雇用対策として実施したニューディール政策になぞらえ、「インフラ革命」を起こすと宣言した。
同政策はジョンソン首相が英中部ダドリーで行った演説で明らかにしたもの。学校、病院、道路、住宅建設など公共インフラ整備を進める。プロジェクトを迅速に実施するため、開発規制を緩和する。詳細はスナク財務相が7月8日に発表する予定だ。
英経済は新型コロナに直撃され、同日発表された2020年1~3月期の国内総生産(GDP)の改定値は前期比2.2%減となり、1979年以来の大幅なマイナス成長を記録した。コロナ対策として導入した経済・社会活動を制限する措置の緩和が進んでいるが、政府が新型コロナウイルスの感染が拡大している中部レスターで制限を再開すると29日に発表したばかりで、経済復興への不安がくすぶっている。
こうした状況下で打ち出した今回の景気対策で、ジョンソン首相は国民に経済復興への努力をアピールした格好だが、昨年12月の総選挙で公約に掲げた政策と大差はない。すでに決まっているインフラ整備計画を前倒しで進める形となる。投資規模も米のニューディール政策と比べて段違いに小さい。財源確保のため増税に踏み切るかどうかも明らかにしていない。このため、最大野党・労働党のスターマー党首は「公約の焼き直し」で「不十分だ」とこきおろした。