米が仏製品に対する報復関税発動へ、デジタル税撤回へ圧力

米通商代表部(USTR)は10日、米IT大手などを対象とするフランスの「デジタルサービス税」に対抗し、同国からの輸入品に報復関税を課すと発表した。13億ドル(約1,400億円)分の仏製品に25%の関税を上乗せする。ただし、発動を2021年1月まで猶予し、交渉による解決の余地を残す。

USTRの通知文書によると、追加関税の対象は化粧品やハンドバッグなど21品目。経済協力開発機構(OECD)が主導する国際的なデジタル課税の導入に向けた交渉や、米仏間で協議する時間を確保するため、発動を最大180日猶予して21年1月6日を期限に設定した。報復措置をちらつかせて独自にデジタル税を導入しないよう圧力をかける狙いで、フランスが撤回しなければ追加関税の適用を前倒しで実施する可能性もある。

欧州では世界的に活動する多国籍IT企業の課税逃れを防ぐため、デジタルサービス税を導入する動きが広がっており、これまでに主要国では英国、フランス、イタリアが導入を決めた。フランスでは19年7月、売上高が全世界で7億5,000万ユーロ以上、仏国内で2,500万ユーロ以上のIT企業を対象に、国内での売上高に3%を課税する法案が成立した。これに対して米政府は、グーグルなど「GAFA」と呼ばれる同国の巨大IT企業を狙い撃ちにした不当な課税として猛反発。昨年12月にフランスに対する報復関税の発動を検討すると表明した。その後、国際課税ルールの合意が形成されるまでフランスがデジタル税の導入を見送る代わりに、米側も制裁を発動しないことで合意していた。

しかし米国は6月、OECDを中心に進められてきた国際間の交渉を中断すると表明。さらに報復措置の検討対象をEUや英国、スペインなど10カ国・地域に拡大した。欧州委員会やフランスなどはこれを受け、独自にデジタル税の導入に踏み切る構えをみせている。

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