欧州航空機大手エアバスは24日、EU加盟国から受けてきた補助金の返済条件を見直すと発表した。エアバスと米ボーイングへの補助金をめぐるEUと米国の通商紛争で、米側が報復関税の拡大をちらつかせてEUへの圧力を強めているため、一定の譲歩を示して不当な補助金との批判をかわすのが狙い。米政府は5月、ボーイングに対する税優遇措置の廃止を世界貿易機関(WTO)に通知しており、今回の決定で16年に及んだ米欧間の対立が解消に向かうか注目される。
エアバスは大型機「A350」の開発にあたり、フランスとスペインから低利融資を受けてきたが、機体が実用化されて商業ベースにのった場合に返済義務が生じるRLI(Repayable Launch Investment)と呼ばれる公的融資のスキームを見直し、返済時の金利引き上げに応じると表明した。エアバスは英国とフランスからも資金支援を受けてきたが、独政府との間ではこれまでに融資利率の引き上げで合意しており、英政府はすでに投資分を回収している。
エアバスは融資の条件見直しで生じる追加の負担額を明らかにしていないが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で4月以降はA350の発注キャンセルが相次いでおり、結果的に返済額が大幅に膨らむ可能性は低いとみられている。
エアバスのギヨム・フォーリ最高経営責任者(CEO)は声明で「当社はWTOが定めたすべての要件を完全に遵守している」と強調。EU加盟国による資金支援の条件見直しにより、米通商代表部(USTR)がEUからの輸入品に課している報復関税の正当性はなくなると指摘した。
また、欧州委員会のホーガン委員(通商担当)も「米国に欧州製品に対する不当な関税を直ちに撤廃するよう要求する。是正されなければEUとして制裁措置を講じる用意がある」と述べ、米側に迅速な対応を求めた。
EUと米国はエアバスとボーイングに対する補助金の違法性をめぐり、2004年からWTOを舞台に争ってきた。WTO上級委員会は18年、EUのエアバスに対する補助金は協定違反とする配収判断を下し、これを受けて米国は19年10月、EUからの輸入品約160品目を対象に追加関税を発動。今年2月に航空機に対する追加関税の税率を10%から15%に引き上げたうえに、6月にはエアバス機の製造を支援するフランス、スペイン、ドイツ、英国からの輸入品を中心に、対象品目の拡大や税率の引き上げを検討すると表明していた。