欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/8

EUその他

再可エネルギー導入目標の達成へ、加盟国が域内での取引検討

この記事の要約

EUは2020年を期限とする再生可能エネルギー導入目標の達成に向けて取り組みを進めているが、現状では国別目標の達成が困難とみられる加盟国の間で、域内の他の国から不足分を購入する構想が検討されている。欧州委員会は域内におけ […]

EUは2020年を期限とする再生可能エネルギー導入目標の達成に向けて取り組みを進めているが、現状では国別目標の達成が困難とみられる加盟国の間で、域内の他の国から不足分を購入する構想が検討されている。欧州委員会は域内における再生可能エネルギー取引を経済性の高い有効な再エネ促進策と位置付けており、加盟国にスキームの活用を推奨していく方針を示している。

EUは20年に向けたエネルギー政策の一環として、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を同年までにEU全体で20%まで高めるとの目標を掲げ、国別の数値目標を定めて加盟国に達成を義務付けている。欧州委が昨年まとめた中間報告によると、英国、フランス、オランダ、ルクセンブルク、マルタ、ラトビアは現状では目標達成が困難な情勢で、新たな政策の導入が求められている。

EUが09年に採択した「再生エネルギー促進指令」では、目標達成に必要な再生可能エネルギーを自国で調達できない場合、不足分を欧州経済領域(EEA)から購入できることになっており、これまでにスウェーデンとノルウェーが電力市場を共通化する契約を結んでいる。一方、ロイター通信によると、英国とアイルランドも再生可能エネルギーを相互に融通する方向で協議していたが、調整が難航して今年に入り交渉を中断している。

欧州委エネルギー総局の政策責任者ヨアヒム・バルケ氏は4日、ロンドンで開催された会議で講演し、再生可能エネルギー導入目標の達成期限が近づくなか、複数の加盟国が域内の他の国から不足分を購入する方向で検討を進めていると説明。「目標達成に必要な再生可能エネルギーをすべて国内で調達するにはコストがかかりすぎる国もあり、域内での取引を可能にすることが極めて重要になっている」と指摘した。

再生可能エネルギーの導入促進策をめぐっては、ドイツやスペインなどを中心に、固定価格買取制度や発電投資を後押しするための多額の補助金が電力料金の高騰を招いたとの批判が高まっている。欧州委はこうした現状を踏まえ、国ごとに異なる補助金制度を調和させ、単一市場を創設して再生可能エネルギーの相互融通を可能にするための取り組みを推進しようとしている。