アイルランドの格安航空大手ライアンエアーは、新型コロナウイルス感染拡大による需要激減を受けたリストラ策の一環として、11月初めに独フランクフルト・ハーン空港の拠点を閉鎖する方針を固めた。ドイツのパイロット組合に当面の雇用保障と引き換えに賃金の引き下げを提案したところ、労組側が拒否したため。欧米メディアが21日、入手した社内通知をもとに報じた。
ライアンエアーは5月、旅客需要が新型コロナ以前の水準に戻るのは早くて2022年夏以降との見方を示し、全従業員の約15%にあたる最大3,000人を削減する方針を打ち出した。ロイター通信によると、アイルランドでは労働組合を介さず個々のパイロットと直接交渉し、新たな雇用条件について合意を取りつけた。一方、英国では人員削減を最小限に抑えるため、パイロットと客室乗務員の組合が減給に同意。欧州を拠点とするパイロットのうち、これまでに約70%がライアンエアーの提示した条件を受け入れている。
これに対し、ドイツのパイロット組合「コックピット連合」は21日、ライアンエアーが提示した条件を拒否すると発表した。24年までの賃金引下げを提案する一方、雇用保障が2021年3月までと短期間である点を問題視し、「ライアンエアーの提案を受け入れた場合、ドイツの航空業界全体に悪影響が及ぶ可能性があると判断した」と表明。そのうえで、交渉を継続して妥協点を探りたい考えを示していた。
ライアンエアーはドイツのパイロットに宛てた通知で「コスト削減のため代替措置を講じなければならない。残念ながら拠点の閉鎖と解雇に踏み切ることになる」と表明。11月初めにフランクフルトの西約100キロに位置するフランクフルト・ハーン空港の拠点を閉鎖する方針を示すとともに、ベルリン・テーゲル空港とデュッセルドルフ空港の拠点についても年内に「閉鎖する可能性が高い」とし、所属パイロットに追って詳細を通知すると説明した。
同社はさらに、フランクフルト、ケルン、ベルリン・シェーネフェルト空港を拠点とするパイロットを対象に人員削減を検討するほか、人件費削減のため昇給凍結や配置換えなどを断行する方針を示している。