EUとスイスの排出量取引制度(ETS)が9月から連結され、双方の排出枠がそれぞれの市場で取引できるようになる。ETSの連結によって炭素市場の流動性が高まり、変動の激しい排出枠価格が安定して、温室効果ガスの削減目標を達成できない事業者が排出枠を購入しやすくなると期待されている。
EUとスイスは2011年にETSの相互リンクに向けた交渉を開始し、16年1月に連結を実現するための条件で合意した。EU側は翌年にスイスとのリンク協定を正式に承認したが、相互リンクを実現するにはスイス側が航空部門を排出量取引制度に組み込む必要があり、関連法が改正されたことで19年12月にようやく連結手続きが完了した。
当初は5月から双方の排出量取引市場で相互に排出枠の取引がスタートする予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期されていた。欧州委員会によると、9月21日からそれぞれの市場で双方の排出枠が取引可能となる。
排出量取引制度に関するEU指令では、京都議定書の締約国またはEUと協定を結んだ国・地域のキャップ・アンド・トレード方式による排出量取引制度とEU-ETSのリンクが認められており、EUは英国が導入する新たな制度との連結も検討する方針だ。英政府は6月、EU離脱の移行期間終了後に向け、EU-ETSに代わる独自の制度を立ち上げる計画を打ち出した。UK-ETSも対象施設ごとに排出枠を設定し、余剰や不足分を取引できる仕組みを構築するがEU-ETSで英国に割り当てられていた21~30年の排出枠を5%引き下げる計画で、EUより厳しい内容を目指すとしている。