2020/8/24

EU情報

EUと英のFTA交渉、依然として難航

この記事の要約

EUと1月末にEUを離脱した英国の自由貿易協定(FTA)など将来の関係の構築に向けた7回目の交渉が18~21日に行われた。しかし、焦点の問題で溝が埋まらず、大きな進展がないまま終了した。実質的な交渉期限となる10月末が迫 […]

EUと1月末にEUを離脱した英国の自由貿易協定(FTA)など将来の関係の構築に向けた7回目の交渉が18~21日に行われた。しかし、焦点の問題で溝が埋まらず、大きな進展がないまま終了した。実質的な交渉期限となる10月末が迫る中、EUのバルニエ主席交渉官は「現段階では合意に至るとは思えない」と述べ、合意がないまま1月に新たな関係に突入することへの危機感を示した。

双方はEU離脱の「移行期間」が終了する2021年1月以降も関税ゼロでの貿易の継続を目指すことで一致している。英政府はEUとカナダが締結した協定と同様のFTAを念頭に置く。しかし、EU側が関税ゼロには公平な競争環境の確保が不可欠として、英国が今後もEU競争法などに従うことを要求しているのに対して、英国は国家の主権を盾に反発。もうひとつの大きな懸案となっている英海域でのEU加盟国の漁業権維持をめぐる問題でも対立が続き、3月に始まった交渉はほとんど進展してない。

バルニエ主席交渉官によると、今回の交渉ではエネルギー、反マネーロンダリング(資金洗浄)での協力など一部では進展があった。しかし、EU側が最優先する公平な競争、漁業権に関しては、英国側が折り合う姿勢を見せず、協議が平行線をたどった。英国側は事態打開の糸口として、FTA協定案の草案を提示したが、EU側は英国のこれまでの主張しか反映されてないとして受け入れず、膠着状態を変えるきっかけとはならなかった。

EUと英国は離脱後の急激な変化を回避するため設けられた移行期間が終了する2020年12月末までの合意が必要だが、合意した協定の文書の翻訳、批准作業に時間がかかるため、10月末が事実上の期限となる。10月15、16日に開かれるEU首脳会議までの合意を視野に入れる。次回の交渉は9月第2週に行われる。

しかし、現時点で双方に歩み寄りの気配はなく、今回の交渉終了後の記者会見では非難合戦が繰り広げられた。バルニエ主席交渉官は、EU側が両問題での合意をFTAの土台とみなし、最優先で妥結させようとしているが、英国側が同調しないとして不満を表明。「残された時間は少ないのに、前進ではなく後退しているように感じる。貴重な時間を無駄にしていることが理解できない」と苦言を呈した。

これに対して、英国のフロスト首席交渉官は、EUが依然として競争ルール、共通漁業政策の英国への適用継続を主張しているだけでなく、同問題で合意しなければ他の重要分野の交渉に応じない姿勢を堅持しているとして、EU側の交渉方針が進展の障害になっていると反論。「合意はまだ可能だが、簡単なことではない」とコメントした。

合意がないまま2021年を迎えると、EUと英国の貿易は世界貿易機関(WTO)のルールに沿ったものとなり、関税が復活する。新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けている双方の経済に追い打ちをかけることになりかねない情勢だ。