スロベニアの国立化学研究所は8月末、開発中の新型コロナウイルスワクチンが臨床前の動物試験で高い免疫反応を示したことを明らかにした。同研究所が取り組むのはウイルスのDNAをベースにしたプラスミドDNAワクチンで、これを接種したマウスの抗体が感染から回復した患者の抗体と同じようにウイルスを無力化した。ただ、これは初期段階の結果であり、安全で効果のある低価格なワクチンの製品化にはまだ時間がかかるとしている。
国立化学研究所は5月下旬に新型コロナワクチンの臨床試験前の動物試験に着手した。開発プロジェクトの投資費用は約50万ユーロを予定する。動物試験で効果が確認できれば、臨床試験に向けて提携先を探す計画だ。
プラスミドDNAワクチンは、細胞がウイルスのたんぱく質の環状DNAを取り込み、病原体タンパク質を生産することにより抗体を作り、免疫をつける仕組みだ。迅速に大量生産できるため生産コストを抑えられ、病原体タンパク質自体を接種しないため安定性が高いという。DNAワクチンとしては米国、日本、韓国などが臨床試験を行っている。一方、英アストラゼネカのアデノウイルスベクター・ワクチン、米モデルナのmRNAワクチン、中国のシノバックやシノファームの不活化ワクチンはすでに臨床最終段階となる第3相試験に入っている。