21年半ばに「デジタルユーロ」発行可否を判断、ECBが意見募集を開始

欧州中央銀行(ECB)は2日、2021年半ばを目途にデジタル通貨を発行するかどうか判断する方針を示すとともに、デジタル通貨を導入するメリットと問題点を分析した報告書を公表した。これを基に12日から一般からの意見募集を開始し、並行して実験に着手する。

デジタル通貨は低コストで国境を越えた決済を円滑にする一方、金融システムの不安定化や、マネーロンダリング(資金洗浄)やサイバー犯罪などに悪用される可能性などが懸念されている。ECBは中国で「デジタル人民元」の試験運用が進められていることなどを念頭に、現行の通貨体制への影響やプライバシー保護などの観点から、「デジタルユーロ」導入の是非について多角的に検討する。

ラガルド総裁は声明で「ユーロは欧州市民のものであり、それを守るのがECBの使命だ。通貨に対する信頼を確保するのがわれわれの役目であり、それにはユーロをデジタル時代に即したものにすることも含まれる。需要が高まればデジタルユーロの発行を準備しなければならない」と強調した。

報告書はユーロ圏19カ国の中銀首脳で構成する「ユーロシステム・タスクフォース」が作成した。ECBはデジタルユーロの発行が求められるシナリオについて◇域内で電子決済の需要が高まり、欧州で発行される安全性の高い決済手段が求められる◇ユーロ圏で現金を放棄する動きが広がる◇民間部門が発行する電子マネーが浸透し、規制上の懸念が生じたり、金融の安定性や消費者保護が脅かされる――などを想定。デジタル通貨の導入が決済の効率化につながる一方、デジタル通貨が伝統的な預金に取って変わった場合、銀行の部門の役割が大きく変化すると指摘した。

ECBのパネッタ専務理事は「デジタルユーロが必要とされる状況に備え、ECBは速やかに発行できる準備をしておかなければならない」と強調した。

上部へスクロール