検査体制拡充や感染者追跡などで連携強化、加盟国が首脳会議で合意

EUは10月29日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてオンライン形式による首脳会議を開き、情報共有や検査体制の拡充などで加盟国の協力体制を強化することで合意した。欧州では10月半ば以降、1日の新規感染者数が10万人を超えており、各国で全土または部分的な都市封鎖や外出制限などの措置が相次いで導入されている。加盟国は域内が憂慮すべき事態に直面しているとの認識を共有し、感染拡大の抑止を最優先する方針で一致した。

首脳会議での合意内容は、欧州委員会が28日に発表したEU共通の追加的な新型コロナ対策に関する勧告が土台となっている。加盟国は新たに1億ユーロ(約120億円)を投じ、短時間で結果が分かる抗原検査をEU全体で拡充することや、各国で導入されている感染者を追跡するためのアプリを連動させ、国境を越えて追跡できる体制を整えることで一致した。

また、欧州委が年内に「渡航者追跡フォーム」を立ち上げ、加盟国が入国者の移動情報を共有できる仕組みを構築する。3月下旬以降の第1波では各国が独自に国境管理を強化し、域内での人の移動や物流に深刻な影響が出た反省を踏まえ、感染者の追跡方法を統一して再び混乱が生じる事態を防ぐ。

ワクチンに関しては、供給可能となった時点で人口に応じて加盟国に平等に配布する原則や、優先接種の対象者を決める基準を統一する方針などを確認した。欧州委のフォンデアライエン委員長によると、ワクチンの本格的な供給開始は来年4月頃になる予定で、EU市民に当初提供される量は最大で月2,000万~5,000万回分との見通しを示した。

フォンデアライエン氏はさらに、感染状況が深刻な地域で医療体制の崩壊を防ぐため、EU予算から2億2,000万ユーロ(約270億円)を拠出し、国境を越えた感染者の移送を支援する方針を表明した。第1波では医療体制が脆弱なイタリアなどの地方都市から病床に比較的余裕があるドイツに多くの患者が移送された。第2波でも10月にオランダからドイツへの移送が実施されている。

このほか欧州委の勧告には、域外から医薬品や医療器具を輸入する際に関税や付加価値税(VAT)を免除する措置を来年4月まで延長するとともに、医療機関が新型コロナ関連の検査キットやワクチンを調達する際、VATを免除することなどが盛り込まれている。さらに域内の物流が滞ることのないよう、検問所に設けられた医療資源や食料品、飲料水など必需物資の輸送のための「グリーンレーン」と呼ばれる優先レーンを拡充し、鉄道や航空機、船による輸送にも同様のシステムを導入することを提案している。

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