欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2020/11/30

EU情報

EUと英のFTA交渉、今週が正念場に

この記事の要約

英国のラーブ外相は29日、EUとの自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉について、30日の週に合意できなければ、時間切れとして協議を打ち切ることを示唆した。交渉は進展しているものの、漁業権をめぐる問題で依然として大きな溝 […]

英国のラーブ外相は29日、EUとの自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉について、30日の週に合意できなければ、時間切れとして協議を打ち切ることを示唆した。交渉は進展しているものの、漁業権をめぐる問題で依然として大きな溝があり、期限内に合意できるかどうか微妙な情勢だ。

EUと英国が関税ゼロでの貿易を続けるためには、英国がEUを離脱した直後の急激な変化を回避するため設けられた「移行期間」が終了する12月末までにFTAを発効させる必要がある。合意に至っても批准作業などに時間がかかるため、交渉の時間は限られている。 

双方は11月中旬とされてきた交渉期限が過ぎても、合意を目指して協議を進めている。EU側の交渉担当者の1人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたため、中断されていた対面方式での協議を28日に再開し、EUのバルニエ首席交渉官と英国のフロスト首席交渉官が率いるチームが日曜の29日にも交渉を行った。

ラーブ外相は国内メディアとのインタビューで、大きな争点となっている公平な競争環境、漁業権に関する問題のうち、競争環境のついては進展があったことを明らかにした。しかし、漁業権については協議が依然として難航している。

英国はEUの共通漁業政策から離脱するため、自国水域でのEU漁船の漁業権を制限しようとしており、EUの反発を招いている。これについてバルニエ首席交渉官は27日、EU側が譲歩し、英国の排他的経済水域(EEZ)内でのEU漁船の漁獲量を金額ベースで15~18%減らすことに応じると英国側に伝えたと加盟国の代表に明らかにした。しかし、英国側は80%減少を要求しており、EUの提案を受け入れていない。

ラーブ外相は今後も協議を続けるが、「来週(30日の週)がボトムライン(最後の交渉)になる」と発言。さらに期限を延ばすとしても、数日間程度になるとして、今週が交渉の正念場になるとの見方を示した。